09)(002)―助動詞の三分類―

09)(002)―助動詞の三分類―
<(戻る)  [総合目次] [■09)『助動詞』概説■] (進む)>
♪音読モード(07:03)♪
●助動詞理解に必要な着眼点
 古典文法の助動詞の分類法には以下の三種類があり得る:
A)助動詞の表わす意味による分類
B)助動詞の直前に来る用言の活用語尾の形(=接続)による分類
C)他の助動詞と併用する場合の文中に於ける登場順序による分類
 上記分類の優勢度に、現在の日本の教師や学習者の扱いの軽重に基づいて、序列を付けるとすれば、A)→B)→C)の順になるだろう。その助動詞がどういう意味を表わすかを知るのがまず先決で、他のどんな語句に付くかなどは二の次、ましてや複数の助動詞どうしが同時に用いられた場合の順序なんて、専門家だけが知っておればよいだけの深すぎる知識という感覚で、B(接続)やC(順序)はかなぐり捨てて専らA(意味)の上っ面を撫でるだけで助動詞の学習はおしまい、という学生(さらには、教師)がほとんどであろうと思われる。
 だが、把握せねばならぬ助動詞の数が3つや4つ(あるいは、英語のように12個ほど)というのならともかく、古典文法で押さえておくべき重要助動詞の数は(平安時代のものだけでも)30語以上にものぼるのである。闇雲にその意味だけを丸呑みしようとするA)分類による棒暗記学習法は、無手勝流の常として、焦点の絞り込み不足による不毛な結末に陥り易いことを知るべきであろう。
 そうした理知的判断の上に立てば、上記B(接続別)及びC(順序別)の助動詞分類法が俄然光ってくるわけであるが、実はこれら両者の関係は密接に連動している。より正確に言えば、文中に於ける助動詞の登場位置の序列(C情報)こそが、その助動詞直前に来る用言(他の助動詞をも含む)の活用語尾の形(接続=B情報)を決定するのである。
●文中での助動詞の登場順序による意味の三段分化
 更に本質に着目して(しかし概括的に)述べれば、助動詞の中でも文中で最も早く登場する助動詞は動詞と最も密接に結び付く性質を持つ助動詞であり、文中での登場順序が遅くなればなるほどに、動詞に対して及ぼす助動詞としての機能が、中立的・客観的(あるいはまた、取って付けたような付加コメント的)な感覚になると言える。その密接度・疎遠度は三段階に分化し、それぞれの段階に応じて、直前に来る用言の活用語尾の形(=接続)が変化する(即ち、助動詞が接続する用言末尾の形態は三種類になる)という仕組みである。具体的には以下の如し:
ア)動詞との連携が最も緊密な助動詞(文中での登場順序=最初)は「未然形」に接続する。
イ)動詞(+動詞と密接な関係の助動詞)による陳述が一段落ついた後に添えられる助動詞(文中での登場順序=中間)は「連用形」に接続する。
ウ)動詞(+他の助動詞群)による陳述に対する客観中立性が強い助動詞(文中での登場位置=最後尾)は「終止形」に接続する。
●助動詞の本質的接続先は「未然形・連用形・終止形」のみ
 助動詞が接続する先の活用形は以上の三つのみである。「已然形」・「命令形」へと接続する助動詞は(形の上ではあるように見えても論理的に)存在せず、「連体形」接続助動詞は極めて特殊な例外のみであり、助動詞の接続先となる活用形は本源的に「未然形・連用形・終止形」の三つだけであって、その接続先を決定するのは「動詞と助動詞との連携の密接度」なのである。
 では、動詞との連携の密接度が強い助動詞とは具体的に何か/動詞との密接度が弱まり客観・中立性が強まる助動詞とは具体的にどんな意味を持つものであるか・・・そのあたりに着眼点を置けば、最初に示した助動詞分類法のA)意味/B)接続/C)順序の3つが、有機的に連動した実のある理解が得られるであろう。



・・・概括的な理論武装による下準備はこのあたりでもう十分であろう。ここからいよいよ助動詞の本格的攻略戦に突入する;が、難敵だけに、一本調子の一発勝負で組み伏せられる相手ではない・・・幾つもの異なる攻め口から、徐々に、冗長的に、段階的に詳述する形で、やっつけることにしよう。時間がかかる無駄の多いやり口に思えるかもしれないが、結果的にはこれが一番の早道&確実な王道になるはずである。
・・・まず最初は「文中での助動詞の登場順序」に着目した攻略法から指南しよう。この段階では(語呂合わせを用いて)「古典助動詞にはどんなのがあるの?/どれとどれが似たような感じなの?」という最も単純な疑問への回答がすんなり出来るようになること(だけ)を目指せばよい(活用形だの詳細な意味などは後回しでよい)。

09)(002)―助動詞の三分類―
<(戻る)  [総合目次] [■09)『助動詞』概説■] (進む)>

コメント (1件)

  1. the teacher
    <質疑応答コーナー>
    ・・・各ページ下には、質疑応答用の「コメントを残す」ボックスが用意されています(見本版では無効になっています)。
    ・・・教材をよく読めばわかるような無意味な質問や、当該テーマに無関係な内容の投稿でなければ、誠実&正確な回答が返ってくるはずです。

コメントは受け付けていません。