09)(001)―助動詞・補助動詞の定義―

09)(001)―助動詞・補助動詞の定義―
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♪音読モード(05:58)♪
 字義通りには、助動詞とは、動詞を補助する語である。
 動詞を補助する語には、しかし、「助動詞」以外に「補助動詞」もある。両者とも、それ自体に意味はなく、動詞の意味を補完する付属語となる点では同一で、そうした役割・意味の上から両者を区分することは不可能である;よって、両者の区分はその「文法的資格」という(通常の言語感覚からはかなり離れた専門的な)分析的判断に拠るより他はない。即ち:
「補助動詞」はそれ自体で文節を構成し得る(=その部分だけを取り出しても意味が通じる)のに対し、「助動詞」は単独で文節を構成することはない。
 ・・・というのが、文法的観点から見た助動詞/補助動詞の唯一の相違点である。
 補助動詞に関してはまた、本来は動詞として用いられていた語が、本来の動詞的意味を失って他の動詞の付属語的な立場の機能語(=その語単独では意味を為さず、他の語句に意味を添えるか、語句相互の関係を規定する働きをする語)に転じたもの、という生成論的な区分もある。確かに、多くの補助動詞は、動詞本来の語義をも併せ持っており、特定の場面でのみその動詞としての独自性を失って他の動詞の引き立て役に回るという点で、この生成論的な補助動詞の定義は、意味を為すように思われる。が、動詞としての語義をも同時に併せ持たないと補助動詞にはならぬ、という裏返しの定義が成立してしまいかねない点で、この「本来は動詞であったものが他の動詞の付属語的機能語に転じたもの」という定義には難がある:「おほす【果す】〔補動サ下二〕」のように、動詞としては用いられない補助動詞専門語を除外する結果になってしまうからである。やはり、「動詞の意味を補完する機能語でありながら、単独で文節を構成し得る語」のほうが、「補助動詞」の定義として論理的に妥当である。
 もっとも、「単独で文節を構成し得る」ということは、裏返せば、「その語自体に、動詞としての意味が宿っている」と言うのに近い。「動詞はそれ1語で意味上の独立圏を形成し得る」というのは凡そ万国共通の言語学的原則であり、これは例えば英語でも同じことであって、どんな動詞でもその1語を原型(=辞書に載っているそのままの形)でポンと置けば命令文になる(例:Go.=行け。Run.=逃げろ。Die.=死ね。Live.=生きろ。・・・)。これに対し、他の動詞の引き立て役に徹し切り、独自の意味を完全に失った機能語(例えば助動詞)であれば、その語自体を単独で取り出したところで何の意味もない(例:Do.=やれ。Can, but, won’t.=できるけど、やらない。・・・と言われても、「何を?」の部分は脈絡に負わねばわからないので、直前にそれなりの文脈があれば何とかなるものの、これら助動詞単独表現のみでは全く何の意味もなさない)・・・ということで、補助動詞(の大部分)が半面に於いては相変わらず動詞として生きている語であるからこそ「単独で文節を構成し得る」のだ、という理論上の土台は押さえておくべきであろう。「かかることやある?」(こういう事ってあるの?)と問われた時に、「はべり」(ございます)と補助動詞1語を返答に用いることは可能(単独で文節を構成可能)だが、「ず!」と助動詞1語で返答しようとしても無理であり、必ず「あら+ず/はべら+ず」のように他の語句と連携せねば存在のしようがないのが助動詞・・・この例を見れば、助動詞と補助動詞の文法的立場の違いが感得できるであろう。
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コメント (1件)

  1. the teacher
    <質疑応答コーナー>
    ・・・各ページ下には、質疑応答用の「コメントを残す」ボックスが用意されています(見本版では無効になっています)。
    ・・・教材をよく読めばわかるような無意味な質問や、当該テーマに無関係な内容の投稿でなければ、誠実&正確な回答が返ってくるはずです。

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