06)(012)―補助動詞―

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♪音読モード(03:40)♪
 動詞の中には、単体では意味を為さずに、他の動詞の「連用形」直後に用いられることで直前の動詞に何らかの意味を添える働きをする「助動詞」的役割を演じるものが少なくない。こういう動詞起源の「助動詞っぽい語」を「補助動詞」と呼ぶ。
 その機能面に於いては完全に「助動詞」と言ってよいが、一面に於いてはその同じ語形が「動詞」としての独立した働きをする場面もあるので、あえて「助動詞」とは呼ばずに「補助動詞」と呼ばれており、この「補助動詞」(並びに「助動詞」)と対照する意味で「動詞」の働きを指す場合、これを「本動詞」と改まって呼ぶこともある。
 古文世界で最も有名な「本動詞 兼 補助動詞」は「給ふ・賜ふ(たまふ)」である:
本動詞&補助動詞「たまふ」の例)「それは隆円に<賜へ>。おのがもとにめでたき琴あり。それに代へさせ<給へ>。」『枕草子』九三・清少納言
(現代語訳)それは隆円に<ください>。私の手元に珍しい琴があります。それと交換なさって<ください>。
 前者の<賜ふ>は、「お与えになる」という「尊敬」の意味を含みつつも、「与える」という動詞の本義を保持しているので「本動詞」である。後者の<給ふ>は(直接に接続するのは直前の尊敬助動詞「さす」連用形「させ」だが)動詞「代ふ」に尊敬の意を添えて「交換してくださいませ」の意味となるものなので「補助動詞」である。
 こうした「本動詞」と「補助動詞」の機能を併せ持つ語は、平安時代に用いられためぼしいものだけでも70にも及ぶ;本編で扱うには雑多すぎる主題なので、詳しくは本書巻末付録「古典補助動詞一覧」に譲る。その個々の意味は様々だが、文法的には「連用形接続の助動詞」(が、たまたま本動詞としても機能するために助動詞扱いを受けずにいる、いわば助動詞補欠軍団)として把握しておけばよい。



・・・ここまでで「動詞」の9つの活用形、即ち、他の語句との対応次第で変わる「表記される形」の規則は出尽くした。次は、書かれた文字を口に乗せて「読まれる音」が特定語句との組合せに限って変則的になる現象=「音便」について解説しよう。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    <質疑応答コーナー>
    ・・・各ページ下には、質疑応答用の「コメントを残す」ボックスが用意されています(見本版では無効になっています)。
    ・・・教材をよく読めばわかるような無意味な質問や、当該テーマに無関係な内容の投稿でなければ、誠実&正確な回答が返ってくるはずです。

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