06)(002)―動詞活用形―

06)(002)―動詞活用形―
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動詞の活用形には次の9種類がある:
-正格活用5種-
◆「四段活用」
◆「上一段活用」
◆「下一段活用」
◆「上二段活用」
◆「下二段活用」
-変格活用4種-
◆「カ行変格活用」
◆「サ行変格活用」
◆「ナ行変格活用」
◆「ラ行変格活用」
 「正格」活用とは、その活用が一定の規則性の枠組みに収まる基本的な(御行儀の良い)活用形である;「変格」活用はその枠組みから外れる変則的な活用形である。
 正格活用の「四段・上一段・下一段・上二段・下二段」の呼称の中の数字は、6つある活用形(未然・連用・終止・連体・已然・命令)の語尾が、五十音の何段にまたがって活用するかを表わしている。
 それぞれの活用形の語尾を、6つの活用形に関して
{MYSTIR=未然(M)・連用(Y)・終止(S)・連体(T)・已然(I)・命(R)}
の形でまとめ、それぞれの活用形の識別用に例の語呂合わせ
《ずむけりなる、。ことぞなんどもばこそいざ》
を書き添えて列記すれば、次のようになる:
◆「四段活用」{MアYイSウTウIエMエ}
 ・・・「四段活用」に於いては次の等式が成り立つ:
<「已然形」=「命令形」>、<「終止形」=「連体形」>
 ・・・「ア・イ・ウ・エ」の四段にまたがって活用。
例:「会ふ」={会は(ず)・会ひ(けり)・会ふ(。)・会ふ(事)・会へ(ども)・(いざ)会へ}
 ・・・「ず」を付けた時の活用語尾が「ア」段(=「未然形がア段」)なら、「四段活用」(または「ナ変=しぬ・いぬ」・「ラ変=あり」)である。
◆「上一段活用」{MイYイSイるTイるIイれRイよ}
 ・・・「上一段活用(及び、下一段活用)」に於いては次の等式が成り立つ:
<「未然形」=「連用形」>、<「終止形」=「連体形」>
 ・・・「イ」段のみで活用。
例:「射る」={射(ず)・射(けり)・射る(。)・射る(事)・射れ(ども)・(いざ)射よ}
 ・・・「上一段活用(及び、下一段活用)」の未然形・連用形には「活用語尾」がない;というか、「語幹」と「活用語尾」の区分ができない形である。
 ・・・「ず」を付けた時の活用語尾が「イ」段(=「未然形がイ段」)で、「終止形」の語幹+活用語尾が「イ+ル」音なら「上一段活用」である(「イ+ル」音以外なら「上二段活用」)
◆「下一段活用」{MケYケSケるTケるIケれRケよ}
 ・・・「下一段活用(及び、上一段活用)」に於いては次の等式が成り立つ:
<「未然形」=「連用形」>、<「終止形」=「連体形」>
 ・・・「エ」段のみで活用。
例:「蹴る」={蹴(ず)・蹴(けり)・蹴る(。)・蹴る(事)・蹴れ(ども)・(いざ)蹴よ}
 ・・・「下一段活用」動詞は「蹴る」の1語のみであり、その未然形・連用形には「活用語尾」がない;というか、「語幹」と「活用語尾」の区分ができない形である。
 ・・・「ず」を付けた時の活用語尾が「エ」段(=「未然形がエ段」)なら「下二段活用」であるが、この「下一段活用=蹴る」と「サ変=す」だけは例外
◆「上二段活用」{MイYイSウTウるIウれRイよ}
 ・・・「上二段活用(及び、下二段活用)」に於いては次の等式が成り立つ:
<「未然形」=「連用形」>
 ・・・「イ・ウ」の二段にまたがって活用。
例:「錆ぶ」={錆び(ず)・錆び(けり)・錆ぶ(。)・錆ぶる(事)・錆ぶれ(ども)・(いざ)錆びよ}
 ・・・「ず」を付けた時の活用語尾が「イ」段(=「未然形がイ段」)で、「終止形」の語幹+活用語尾が「イ+ル」音以外のものは「上二段活用」である(「イ+ル」音の場合のみ「上一段活用」)。
◆「下二段活用」{MエYエSウTウるIウれRエよ}
 ・・・「下二段活用(及び、上二段活用)」に於いては次の等式が成り立つ:
<「未然形」=「連用形」>
 ・・・「ウ・エ」の二段にまたがって活用。
例:「冷む」={冷め(ず)・冷め(けり)・冷む(。)・冷むる(事)・冷むれ(ども)・(いざ)冷めよ}
 ・・・「ず」を付けた時の活用語尾が「エ」段(=「未然形がエ段」)なら「下二段活用」である(例外は「下一段活用=蹴る」/「サ変=す」)。
 ・・・「下二段活用」動詞の中で「得(う)」・「経(ふ)」・「寝(ぬ)」の3語だけは、未然形・連用形に「活用語尾」がない;というか、「語幹」と「活用語尾」の区分ができない形である:
例:「得(う)」{え(ず)・え(けり)・う(。)・うる(事)・うれ(ども)・(いざ)えよ}
例:「経(ふ)」{へ(ず)・へ(けり)・ふ(。)・ふる(事)・ふれ(ども)・(いざ)へよ}
例:「寝(ぬ)」{ね(ず)・ね(けり)・ぬ(。)・ぬる(事)・ぬれ(ども)・(いざ)ねよ}



 ・・・以上が正格活用5種である。以下は、変格活用4種である:


◆「カ行変格活用」{MコYキSクTクるIクれRコ/コよ}
 ・・・「カ変」動詞は「来(く)」の1語のみ
 ・・・「イ・ウ」及び「オ」段に散らばる形で(「エ」段を飛ばして)活用。
 ・・・「エ段音」を持たない活用形はこの「カ変」と「上一段」「上二段」のみ
 ・・・「命令形」は「こ」(中古まで)/「こよ」(中世以降)の2種類がある。
例:「来(く)」={こ(ず)・き(けり)・く(。)・くる(事)・くれ(ども)・(いざ)こ/こよ}
 ・・・本来のカ変動詞は「来(く)」の1語のみだが、「出で来(いでく)」のような複合動詞もまたこの類に入るので、カ変動詞の総数はそれなりに多い。
◆「サ行変格活用」{MセYシSスTスるIスれRセよ}
 ・・・「サ変」動詞は「為(す)」及び「御座す(おはす)」のみ
 ・・・「イ・ウ・エ」の3段にまたがって活用。
例:「為(す)」={せ(ず)・し(けり)・す(。)・する(事)・すれ(ども)・(いざ)せよ}
 ・・・「サ変活用」動詞「為(す)」の未然形・連用形には「活用語尾」がない;というか、「語幹」と「活用語尾」の区分ができない形である。
 ・・・本来のサ変動詞は「す」&「おはす」の2語のみだが、次のような複合語もまた「サ変活用語」である:
<名詞+すorず>
 ・・・愛す、いつくしみす、うるはしみす、うんず、記す、くす、くんず、死す,etc.
<形容詞連用形(またはその「ウ音便」・「撥音便」)+すorず>
 ・・・かたじけなくす、かなしうす、重んず,etc.
<形容動詞連用形(=~に)+す>
 ・・・事にす、専らにす,etc.
 これら複合的組成を持つ各種の語句も「サ変」となるので、「サ変活用語」の勢力はかなりの数に膨れ上がる。
◆「ナ行変格活用」{MナYニSヌTヌるIヌれRネ}
 ・・・「ナ変」動詞は「死ぬ」・「去ぬ・往ぬ(いぬ)」の2語のみ。いずれも、それまで存在していたものが「消え去る」意を表わし、「存在する」意の「ラ変(=あり)」とは光と影のような対照的関係にある。
 ・・・「ア・イ・ウ・エ」の四段にまたがって活用。
例:「死ぬ」={しな(ず)・しに(けり)・しぬ(。)・しぬる(事)・しぬれ(ども)・(いざ)しね}
◆「ラ行変格活用」{MラYリSリTルIレRレ}
 ・・・「ラ行変格活用」に於いては次の等式が成り立つ:
<「連用形」=「終止形」>、<「已然形」=「命令形」>
 ・・・「ラ変」動詞としてはたった1語「あり」あるのみ(だが、「をり」・「はべり」・「いまそかり」その他の複合語も含めればかなりの大所帯になる)。
 ・・・「ラ変」動詞には常に「存在」の意味が内包されており、「消え去る」意味を表わす「ナ変」動詞(=しぬ・いぬ)と対照的な語と言える。
 ・・・「ア・イ・ウ・エ」の四段にまたがって活用。
例:「あり」={あら(ず)・あり(けり)・あり(。)・ある(事)・あれ(ども)・(いざ)あれ}
 ・・・古典動詞のうち、終止形が「イ段音」となる活用形はこの「ラ変」のみである(・・・この「イ段音」終止形を「ウ段音」に変えれば「四段活用」と同形となる)。
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 ・・・9つの活用形の呼び名を覚えるための語呂合わせは、こちら:
《アイウエ四段;イエ一段&ウづいて二段の上下ペア;カサナラへん》
「正格活用」のうち、「あ・い・う・え」の四段音にまたがって活用するのが「四段活用」、「い」段のみ&「え」段のみで活用するのが「上一段活用」&「下一段活用」のペア、この「い」段のみ(上一段)&「え」段のみ(下一段)に更に「う」段音が付くのが「上二段活用(い+う段)」&「下二段活用(え+う段)」のペア、これら以外は「カ変」・「サ変」・「ナ変」・「ラ変」の「変格活用」。




 ・・・一部活用形が同形で区別が付かぬ活用形集団をまとめると、次のようになる:
●「未然形」と「連用形」が同一形となる活用形集団
「上一段活用」「下一段活用」「上二段活用」「下二段活用」
 ・・・受験生泣かせの「未然形接続」終助詞「なむ」と「連用形接続」連語「なむ」の区分が不可能だったりして、一番厄介な団体さんが「上下ワンツー」グループ。
●「終止形」と「連体形」が同一形となる活用形集団
「上一段活用」「下一段活用」「四段活用」
 「連体形係り結び」がそれらしい形で機能してくれないのがこの「上1+下1=4」のインチキ足し算グループ;だが、近世以降は全活用形がこの道を辿ることになる。
 ・・・上記以外では、「四段&ラ変」で「已然形=命令形」、「ラ変」で「連用形=終止形」の同形現象が見られるが、古文解釈上は問題ないので無視してよい。



・・・「未然形」活用語尾による9活用形識別法の語呂合わせは、以下のごとし:
《ア未然は四段、ナ・ラ変; イ未然はイル上一の他は上二; 
エ未然は下二、下一蹴ず、か、為ず; オ未然はカ変・・・ウ未然何も無し》
●未然形活用語尾が「ア」段なら、四段活用またはナ変(死ぬ・往ぬ)ラ変(あり)
●未然形活用語尾が「イ」段で終止形が「イル」音は上一段活用、その他は上二段活用
●未然形活用語尾が「エ」段なら下二段活用または下一段活用(ける)かサ変(す)
●未然形活用語尾が「オ」段ならカ変(く)
●未然形活用語尾が「ウ」段の活用形は存在しない

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・・・全9種にわたる動詞活用形の概括的説明は以上である。古文読みとして知っておくべきことはこれで出し尽くした感じだが、以下、各活用形ごとに(現代日本語口語文法との対比という観点から)更に解説を加えておく・・・もっとも、受験生にとっては約100%無意味であり、古文読解上もどうでもいい事柄が多いので、国学者やSmart Aleck(利口ぶりっこ)として門外漢をイジメたい願望ある者以外は、以降の章06)の項はほぼ全て読み飛ばしてもらって構わない;ただ、老婆心ながら申し添えるならば、06)(009)サ変06)(011)ラ変06)(012)補助動詞の3項の解説には、古文読みとしてそれなりの効用が得られる内容が含まれるであろう。

06)(002)―動詞活用形―
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コメント (1件)

  1. the teacher
    <質疑応答コーナー>
    ・・・各ページ下には、質疑応答用の「コメントを残す」ボックスが用意されています(見本版では無効になっています)。
    ・・・教材をよく読めばわかるような無意味な質問や、当該テーマに無関係な内容の投稿でなければ、誠実&正確な回答が返ってくるはずです。

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