04)(003)―形容動詞「ナリ活用」と「タリ活用」の概括的特性―

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●「形容動詞」と言えば「ナリ活用」なり
 (多少乱暴ながら)統計的に正しい事実として「形容動詞」はほぼ全て「ナリ活用」であり、「タリ活用」は殆ど(少なくとも入試古文では)見られない、と言ってよい。
 「ナリ活用」は上代(奈良時代)には未発達、6つの活用形が定まったのは中古(=平安時代)のことで、同じ活用の断定助動詞「なり」も生じて盛んに用いられている。
●「タリ活用」は漢文調の男性語・・・なれど古文入試にはほとんど出ず
 「タリ活用」は「ナリ活用」より遅れて発達した漢文訓読調の男性語。同じ活用の断定助動詞「たり」は中古初期には既に生じていたが、形容動詞「たり」は中古には連用形「~と」の使用例が見られる程度で未発達。中世(=鎌倉時代以降)の軍記物『平家物語』には多くの用例があるが、女性はまず用いない。この事情は断定助動詞「たり」も同じで、和文では(特に女性は)「なり」が主役、「たり」の影は実に薄い。
 主に中古の和文を相手にする受験生の場合、「タリ活用形容動詞」に遭遇する確率はほぼゼロに近いであろう。ある古語辞典を例に取れば、収録語数約3万5千語のうち「タリ活用形容動詞」の数はわずか12語(全見出語中の0.03%)・・・「ナリ活用」に対する「タリ活用」の劣勢は、この一事のみを以てしても明らかであろう。
 漢語由来の「タリ活用」には、様態を表わす「~然」の付く語(例:「泰然(たいぜん)たり」)や、同一語句を反復したもの(=畳語)(例:「皎皎(かうかう)たり」)が多い。「凛々リンリン」「爛々ランラン」等々、中華風(パンダの名前ふう?)である。
 先述した通り、「ナリ活用」・「タリ活用」ともに、「形容動詞」の本源的な機能は、「状態を表わす語+格助詞に/と」から生じた「連用形:~に/~と」による「副詞」用法である(が、「副詞」か「形容動詞連用形」か、悩む必要はない:両方なのだから)。
●「形容動詞ナリ」と「断定助動詞なり」の違い
 語形の上では同一となる「形容動詞ナリ活用」と「名詞+断定助動詞なり」の区別は、煎じ詰めれば「用言」(形容動詞)と「体言」(名詞+なり)の相違であるから、直前に「連用修飾語」(例:いと)を付けて通じれば「形容動詞ナリ活用」であり、直前に「連体修飾語」(例:我が)を付けて意味が通れば「名詞+断定助動詞なり」である。「形容動詞ナリ活用」/「名詞」共用語の場合でもこの識別法は有効である:
形容動詞ナリ活用)「言葉<たくみなり>」(=うまいこと言ってる)
 ・・・連用修飾語(いと)を付けて「言葉(いと)<たくみなり>」として意味が通じる;が、連体修飾語(わが)を付けて「言葉(わが)<たくみなり>」としても意味が通じないから、この場合は「形容動詞の終止形」。
名詞+断定助動詞「なり」)「これぞ世に名高き<たくみ>なり」(=これこそ世間で有名な匠の技である)
 ・・・連用修飾語(いと)を付けて「これぞ世に名高き(いと)<たくみ>なり」としても意味が通じない;が、連体修飾語(わが)を付けて「これぞ世に名高き(わが)<たくみ>なり」なら意味が通じるから、この場合は「名詞+断定助動詞なり」。
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コメント (1件)

  1. the teacher
    <質疑応答コーナー>
    ・・・各ページ下には、質疑応答用の「コメントを残す」ボックスが用意されています(見本版では無効になっています)。
    ・・・教材をよく読めばわかるような無意味な質問や、当該テーマに無関係な内容の投稿でなければ、誠実&正確な回答が返ってくるはずです。

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