意味集団<082>ブロック=[05]


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〈A〉 こと【事】
《中古に「言」と分化して以降の「事」の対義語は「物」。存在する事物の実体に言及して具体的な「物」に対し、「事」事物の状態・性質に言及して抽象的である。いずれも「・・・な物/事」という形式名詞的にも用いられ、この用法での両者の境界線は曖昧。》
〔名〕
  (1) 〈(活用語の連体形の直後に置き、形式名詞的に用いて)名詞句を作る。〉 ・・・という事。・・・する事。・・・である事。・・・な事。   (2) 〈(事柄の発生に着目して)(人の行為や、人・物との関わりの結果として)生起する事柄。〉 出来事。事例。事。件。   (3) 〈(事柄の内容に着目して)(時間の経過と共に変化する)事態の様相や展開。〉 経緯事情。状況。成り行き。展開。一部始終。模様。様子。   (4) 〈(その発生・展開・結末が)人や世の中に何らかの影響を及ぼすような重大な事柄。特に、人の死。〉 事件。不幸。事変。一大事。事故。由々しき事態。   (5) 〈(一定の様式に従って執り行なわれる)職務的・事務的・典礼的な事柄。〉 仕事。任務。用件。用事。公務。政務。行事。事業。儀礼。儀式。刑罰。   (6) 〈(文末に置き、断定・命令・禁止・感嘆・疑問などの意を)体言止めの形で強調的に表わす。〉 ・・・ということ。・・・すること。・・・せぬこと。・・・なものよ。・・・なのか。   (7) 〈(「事にす」、「事にて」などの形で)その事柄に意を用いる意を表わす。〉 没頭する。没入する。専心する。専念する。かかずり合う。

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〈A〉 まこと【真・実・誠】
《純粋・正確の意の接頭語「ま」に「事」を付けた語。ありのままを忠実に伝える「事実・真実」と、何の邪心もない「誠実」の意味に二分されるのは現代語も古語も同じ。副詞としては「実に」、感動詞としては(何かを思い出して)「そうそう、そういえば」の意を表わす。》
〔名・形動ナリ〕 {なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ}
  (1) 〈物事をありのまま忠実に伝え、虚偽がないこと。〉 真実。事実。   (2) 〈悪い思惑も何もなく、心底から相手を思いやる気持ち。〉 誠実。誠意。誠心。真心。   
〔副〕
  (1) 〈程度のだしさを強調する語。〉 本当に。まことに。全く。実に。   
〔感〕
  (1) 〈(多く「まことや」の形で)何かを思い出したり、咄嗟に思い付いたりした時に言う語。〉 そうそう。そう言えば。おお、そうだ。あぁ、確か。

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〈A〉 ことわり【理・断り】
《「事割り」=「物事を、論理的筋道を通して割り切る」が原義で、「道理」・「判断/説明」・「理由」の語義が中核。「あれこれ理由を付けて自己の行動を正当化すること」として「言い訳/辞退/謝罪」の語義も派生的に生じた。》
〔名〕
  (1) 〈(思考・行動の根拠となるべき)当然の筋道。〉 道理。論理。条理。筋。   (2) 〈(妥当な筋道に従って)事態を論理的に考えること。また、その考えを論理的に述べること。〉 判断。説明。判定。理屈。   (3) 〈(何かを行なうこと、行なわぬことを)妥当と判断すべき根拠。〉 理由。訳。事情。   (4) 〈(あれこれと理由を付けて)自分の行動を正当化すること。相手の申し出を断わること。過失をびること。〉 言い訳。辞退。謝罪。弁解。弁明。申し開き。言い逃れ。お断わり。おび。   
〔形動ナリ〕 {なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ}
  (1) 〈道理に照らして納得できるさま。〉 当然だ。もっともだ。道理である。当たり前だ。

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〈C〉 ことづく【言付く・託く】
《現代の「言付け」は「伝言」の意だが、上代には「言/事」は言語学的に未分化、その後も発言と行動が密接に連動するのが古典時代の感覚なので、「事」系に属する「物品の預託」・「行動の委託」、更には「託つ」と同様の「事態の原因を他者に帰する」意をも表わす。》
〔自カ下二〕 {け・け・く・くる・くれ・けよ}
  (1) 〈(事態を)他者に原因があるとする。〉 ・・・にかこつける。・・・のせいにする。・・・を口実とする。・・・にする。   
〔他カ下二〕 {け・け・く・くる・くれ・けよ}
  (1) 〈(第三者に対して)自分に代わって発言・行動・保管するよう頼む。〉 伝言する。委託する。預託する。言付ける。言い付ける。言い置く。預ける。託す。お願いする。

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〈C〉 ことざま【事様】
《漢字で書くと一目瞭然だが、「ことざま」には「事様」と「異様」とがあり、混同し易い。「事様」は読んで字の如き「事態・様子」と、事態の背後にい知ることの出来る「人の心の様子」の意を表わす。(混同回避の意も込めて)「事の様」と連語風に言う場合も多い。》
〔名〕
  (1) 〈(物事の)存在の様態。〉 様子。有様。感じ。雰囲気。   (2) 〈(物事の背後にい知れる)人の心の様子。〉 気構え。心構え。心の程。心模様。

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〈C〉 ことざま【異様】
《現代語「異様」(常とは異なる様子)の他に、その脈絡で問題になっている人や事柄とは「別の誰か・何か」をも意味する。同音異義語「事様」(事態の様相)との区別に要注意の語で、混同を嫌ってのことであろう、「ことざま」ではなく「ことやう」と読む場合も多い。》
〔名〕
  (1) 〈普通とは異なる状態。〉 異様さ。違う点。変わったところ。妙な様子。   (2) 〈(その場で問題になっている人・物とは)別の誰か・何かを指す語。〉 別人。別の話。他の人。別方面。別系統。それ以外。それとは関係ない。そういうことではなくて。

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〈C〉 こともなし【事も無し】
「事」の解釈次第で、「一大事なし」(無事)/「難点なし」(無難)/「傑出点なし」(平凡)/「苦労なし」(容易)と語義が分化する。最後の意は副助詞「ぞ」+格助詞「と」を添えた「ことぞともなし」の形で表わすこともあり、現代語「事も無げ」に引き継がれている。》
〔連語〕 《こと〔名〕+も〔格助〕+なし〔形ク〕》
  (1) 〈(重大な出来事の発生もなく)常と変わらないさま。〉 平穏無事だ。大事ない。大過ない。何事もない。至って静かだ。   (2) 〈(非難すべき点がなく)立派なさま。(強い讃辞としては用いない)〉 難点がない。欠点がない。無難だ。そつがない。抜かりはない。   (3) 〈(賞賛すべき点が見当たらず)ありふれているさま。〉 可もなく不可もない。平々凡々だ。凡庸だ。ありふれている。見るべき点もない。何ということもない。特筆に値しない。   (4) 〈(実行に伴う苦労もなく)すんなりと片付くさま。〉 容易だ。容易い。造作もない。わけもない。朝飯前だ。ちょちょいのちょいだ。ちょろいもんだ。お安い御用だ。

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