水準=【A】/語義総数=<7>/ブロック=[10]


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〈A〉 あふ【合ふ・会ふ・逢ふ・婚ふ】
《別々のものが集合する意味を多岐亘って表わす語で、現代語同様の語義が多いが、古語で多用される要注意語義は「男と女として結ばれる」。》
〔自ハ四〕 {は・ひ・ふ・ふ・へ・へ}
  (1) 〈(別々のものが)一ケ所に集まる。〉 集合する。融合する。重なる。一つになる。   (2) 〈(異なるものどうしが)ぴたりとうまく合う。〉 調和する。合致する。適合する。釣り合う。相応しい。お似合いだ。うってつけだ。・・・にう。   (3) 〈(偶然または約束して)人・物事に会う。〉 出会う。出くわす。遭遇する。対面する。面会する。顔合わせする。   (4) 〈(夫婦または恋人どうしとして)男と女が結ばれる。〉 結婚する。肉体関係を持つ。男女の関係になる。りを結ぶ。   (5) 〈(敵どうしとして)対面する。〉 張り合う。対抗する。立ち向かう。向き合う。競う。争う。   (6) 〈(動詞の連用形に付いて、補助動詞的に)共に何かを行なう意を表わす。〉 一緒に・・・する。互いに・・・し合う。一斉に・・・する。   
〔他ハ下二〕 {へ・へ・ふ・ふる・ふれ・へよ}
  (1) 〈複数のものを一つにする。〉 合わせる。混ぜる。一緒にする。まとめる。

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〈A〉 えん【艶】
《漢語に由来し、上代には(男女双方の)「華麗でのある美」、中古漢詩文では外観上の魅惑的な美(妖艶)の意で用いたが、漢学の素養のある平安女流文学の筆者達が各人各様の「魅惑的」の感覚で濫用し出して以降、定義困難な多様性を持つ語となった。》
〔名〕
  (1) 〈(鎌倉初期に藤原俊成が唱えた)和歌の余情美を表わす歌論用語。〉   
〔名・形動ナリ〕 {なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ}
  (1) 〈(外観上の)人目を引くような際立つ美。〉 華麗なる美しさ。やかさ。優美さ。しっとりとした美。   (2) 〈(人の容姿・態度からそれとなく発散される)肉感的な魅力。〉 官能的魅力。色っぽさ。っぽさ。あだっぽさ。なまめかしさ。悩ましさ。ほのかな色気。   (3) 〈(人が)風情あるものや恋愛の情緒を好む態度。〉 風流心。好色。多感。多情。情緒的。色好み。   (4) 〈(人の態度から感じられる)何かしらわけがありそうな感じ。〉 いわくありげ。思わせぶり。訳あり。ほのめかし。含み。含蓄示唆   (5) 〈(景色・物に対する個人的印象としての)何となく心引かれる趣。〉 情趣。風情。風流。魅惑。そこはかとない趣。奥深さ。   (6) 〈(歌論語として)華麗にして奥深い余情美。〉 妖艶優雅にして官能的。華やかになまめかしい。

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〈A〉 おぼゆ【覚ゆ】
《動詞「思ふ」に上代の助動詞「ゆ」が付いて「おもはゆ」となり、これが「おもほゆ」→「おぼほゆ」→「おぼゆ」と転じたもの。感覚・想念が自然発露的に浮かぶ意を表わし、現代語「思い出す」に通じる記憶・想起系の語だが、「他の何か・誰かに似ている」の語義には要注意。》
〔自ヤ下二〕 {え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ}
  (1) 〈(意志・作為を伴わず)自然発生的に何らかの感覚が浮かぶ。〉 ・・・と感じられる。・・・の気がする。・・・に思われる。   (2) 〈(意識せずに)自然発生的に何らかの記憶が浮かぶ。〉 思い出される。思い浮かぶ。思い起こされる。記憶にる。   (3) 〈(他の何かに)似ていると感じられる。〉 似通う。・・・に似ている。・・・そっくりだ。・・・を思い起こさせる。・・・風なところがある。・・・を彷彿とさせる。   (4) 〈(他者から)何らかの評価を受ける。〉 ・・・とみなされる。・・・だと思われる。・・・扱いされる。・・・として世間で通る。世に・・・と言われる。   
〔他ヤ下二〕 {え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ}
  (1) 〈(記憶の中から)自然に思い出す。〉 思い浮かべる。思い付く。想起する。   (2) 〈(記憶の中から)思い出して他者に語る。〉 思い出話をする。昔語りをする。   (3) 〈(記憶の中に)意識して刻み込む。〉 覚え込む。記憶する。暗記する。忘れずにいる。

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〈A〉 おもふ【思ふ・想ふ】
《頭と心が宿し得る各種の思考・感情を広く表わす語。類義語の「心」は「内面の思いが外向性の行動として働く」ことに重点を置くのに対し、「思ひ・想ひ」は「人間の内面に於ける様々な心の働き」に重点がある。》
〔他ハ四〕 {は・ひ・ふ・ふ・へ・へ}
  (1) 〈(頭脳の働きにより)論理的に物事を処理する。〉 思考する。思う。考える。判断する。考察する。理解する。認識する。える。   (2) 〈(感情の作用により)他のものよりも殊更に大事に思い、心引かれる。〉 愛慕する。愛する。愛好する。う。恋する。しく思う。気に入る。好きである。   (3) 〈(自分にとって好ましくない事態について)心の中で重く受け止める。〉 苦悩する。思い悩む。懸念を抱く。案ずる。心配する。   (4) 〈(過去の事柄を)記憶の中から呼び出す。〉 かしむ。思い出す。回想する。追想する。追憶する。追慕する。懐古する。   (5) 〈(未来に於いて)何事かが実現することを期待する。〉 希望する。願う。望む。希求する。思い描く。心中かに期す。   (6) 〈(事態が実現する前に)ある種の事態の発生をめ思い描く。〉 予想する。予測する。期する。覚悟する。想像する。   (7) 〈(心の中の思いを)表情に表わす。〉 気持ちを顔に出す。・・・といった顔付きをする。・・・げな表情である。

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〈A〉 けしき【気色】
《漢語「気色」から生じたもので、これを「きしょく・きそく」と読めばその適用対象は専ら「人」となるが、「けしき」は「人・自然界」双方を対象とする点に相違がある;とはいえ、両語は根源的には同種であって、視覚的に認識される各種の気配を広範に表わす。》
〔名〕
  (1) 〈(内面の感情が)表面に出ること。また、表情・態度に表われた内心。〉 気色ばむこと。面持ち。表情。顔色。顔付き。態度。素振り。   (2) 〈(表情や態度から察せられる)人がかに考えている事柄。〉 内意。意向。本心。思い。考え。   (3) 〈人に対して抱く好意的な感情。〉 御機嫌寵愛。覚え。お気に入り。好意。信任。   (4) 〈(表情に出る、出ないにかかわらず)生理学的・心理的な感触。〉 気分。気持ち。感じ。精神状態。具合い。気色。   (5) 〈(視覚的にえた)人・物事のありさま。(景物の)心引かれる雰囲気。〉 様子。情趣。景色。情景。光景。風景。事情。見た感じ。見た目。風情。勝れた趣。景勝。   (6) 〈(物・人・表情・態度などに見られる)変化を予感させるちょっとした動き。〉 兆候。し。気配。変わった素振り。変な感じ。   (7) 〈(副詞的に用いて)全体の中のごく一部であること、また、見逃しやすいほど目立たぬことを表わす。〉 ほんの少しだけ。かばかり。一部分。一端。ちょっと。か。

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〈A〉 こと【事】
《中古に「言」と分化して以降の「事」の対義語は「物」。存在する事物の実体に言及して具体的な「物」に対し、「事」事物の状態・性質に言及して抽象的である。いずれも「・・・な物/事」という形式名詞的にも用いられ、この用法での両者の境界線は曖昧。》
〔名〕
  (1) 〈(活用語の連体形の直後に置き、形式名詞的に用いて)名詞句を作る。〉 ・・・という事。・・・する事。・・・である事。・・・な事。   (2) 〈(事柄の発生に着目して)(人の行為や、人・物との関わりの結果として)生起する事柄。〉 出来事。事例。事。件。   (3) 〈(事柄の内容に着目して)(時間の経過と共に変化する)事態の様相や展開。〉 経緯事情。状況。成り行き。展開。一部始終。模様。様子。   (4) 〈(その発生・展開・結末が)人や世の中に何らかの影響を及ぼすような重大な事柄。特に、人の死。〉 事件。不幸。事変。一大事。事故。由々しき事態。   (5) 〈(一定の様式に従って執り行なわれる)職務的・事務的・典礼的な事柄。〉 仕事。任務。用件。用事。公務。政務。行事。事業。儀礼。儀式。刑罰。   (6) 〈(文末に置き、断定・命令・禁止・感嘆・疑問などの意を)体言止めの形で強調的に表わす。〉 ・・・ということ。・・・すること。・・・せぬこと。・・・なものよ。・・・なのか。   (7) 〈(「事にす」、「事にて」などの形で)その事柄に意を用いる意を表わす。〉 没頭する。没入する。専心する。専念する。かかずり合う。

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〈A〉 す【為】
《現代語の「する」/英語の”do”に相当し、それ自体には殆ど意味がなく、「・・・な心地す」(・・・な気分がする)のように、直前語句(前例では”心地“)の意味を借りねば記述が成立せぬ語。逆に言えば、直前の名詞(目的語)に動詞性を添える補助動詞的な語が「為」である。》
〔自サ変〕 {せ・し・す・する・すれ・せよ}
  (1) 〈(自らの意志によらない)何らかの動作・状態が起こる。また、その動作・状態が自然的に認識・感得される。〉 ・・・する。・・・がする。・・・と感じる。・・・に思われる。   (2) 〈他の自動詞の代用として用いる。〉 ・・・する。   (3) 〈(「・・・むとす」の形で)(意志的、または自然発生的に)何らかの動作を起こそうとする。または、何らかの状態が起ころうとする。〉 ・・・しようとする。・・・しそうになる。・・・しようと思う。・・・することを望む。今や・・・としている。まさに・・・せんとする。   
〔他サ変〕 {せ・し・す・する・すれ・せよ}
  (1) 〈(意志的に)何らかの動作・行動を取る。〉 ・・・する。・・・をやる。・・・を行なう。   (2) 〈他の他動詞の代用として用いる。〉 ・・・する。   (3) 〈(形容詞・形容動詞の連用形、名詞+格助詞「に」・「と」の下に付いて)そのようなものと判断・形容・処遇する。〉 ・・・とする。・・・とみなす。・・・と言う。・・・と思う。・・・と考える。・・・として扱う。   
〔補動サ変〕 {せ・し・す・する・すれ・せよ}
  (1) 〈(動詞の連用形+係助詞・副助詞の下に付いて)上の動詞の意味を強調したり、別の意味を添える。〉 ・・・する。

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〈A〉 なかなか【なかなか】
《中古は「なかなかに」の副詞形のみ、以後は形容動詞にも用いた。名詞「」の畳語で、両極端の半分に位置することから「中途半端」・「こんな程度なら最初からないほうがまし」・「いっそ・・・の方がいい」と否定的な語義ばかり。肯定的な語義は中世以降のもの。》
〔形動ナリ〕 {なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ}
  (1) 〈徹底を欠き、感心しないさま。〉 中途半端だ。どっちつかずだ。はっきりしない。生半可だ。   (2) 〈良い結果が期待できなかったり、逆効果になりそうな行動に気乗りがしないさま。〉 むしろしない方がまし。なまじするとロクなことにならない。すればかえってドツボにはまる。そんなことしたら藪蛇だ。有害無益な行動だ。   
〔副〕
  (1) 〈不徹底な形でなされるさま。〉 中途半端に。なまじ。なまじっか。生半可に。どっちつかずの形で。   (2) 〈本来予想されたのとは逆の結果がもたらされるさま。〉 かえって。逆に。むしろ。いっそ。   (3) 〈(中世以降)(打消の語を伴って)否定の意を強調する。〉 到底。そう簡単には。なまじっかのことでは。なかなか。   (4) 〈(中世以降)それなりに程度が高いさま。〉 相当。随分。かなり。そこそこ。まずまず。なかなか。   
〔感〕
  (1) 〈(狂言で)相手のことばを肯定するときに用いる。〉 いかにも。そうそう。その通り。おっしゃる通り。勿論

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〈A〉 をとこ【男】
上代の日本には「若返る」の意の「復つ・変若つ」という語があり、これが「をつ→をと」となり、更に「子」が付いた語が「男」「女」が付いた語が「乙女・少女・処女」。若くて元気な男性でも、女の結婚相手として意識されない/身分が低い場合は「をのこ」と呼ばれた。》
〔名〕
  (1) 〈(結婚適齢期にあり、女性から見て結婚相手たり得る)若くて活力に満ちた男子。〉 成人男子。若い盛りの男。若者。   (2) 〈(性別に言及し)(女性と対照した)一般的な意味での男性。〉 男。男性。男子。男児。   (3) 〈(恋愛の相手として)(妻と対照した)愛する男性。〉 夫。恋人の男。旦那様。彼。いいひと。   (4) 〈(親から見た)男の子供。〉 息子。男の子。男子。男児。子息。   (5) 〈(僧侶から見た)出家せず俗界に留まっている男性。〉 世俗の男性。俗人。   (6) 〈(主人・貴人から見た)下働きの男性。〉 下男下僕。召使いの男。従僕の男。   (7) 〈(髪型・服装・文字などの)男性風の様式。〉 男性風。男文字。男流。男型。漢字。

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