ざる【戯る】〔自ラ下二〕

   [733] ざる【戯る】〔自ラ下二〕

〈B〉 ざる【戯る】
《「あざる」の略形で、普通と違う目立ち方に言及する点は同じだが、それを気の利いた振る舞いとして好意的に捉えていて、その語感は現代語「駄洒落」・「オシャレ」に引き継がれている。》
〔自ラ下二〕 {れ・れ・る・るる・るれ・れよ}
  (1) 〈(真剣でなく)軽い気持ちで楽しげに事を為す。〉 ふざける。はしゃぐ。れる。遊び心でやる。   (2) 〈男女間の恋愛事情によく通じている。また、好色そうに見える。〉 世慣れている。なまめかしい。っぽい。色っぽい。あだっぽい。いかにも好きそうだ。   (3) 〈(見た目が)美的感覚・芸術的嗜好に訴える魅力を持っている。〉 洒落ている。オシャレだ。風流だ。風雅な趣がある。趣深い。
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【あざる】→【ざる】→【おサレ】
 きっちりした秩序・規律から少々外れて立ち回る「あざる=ふざける、たわむれる」は、語頭の「あ」が取れると「ざる」となる。
 動詞はすべからく「連用形にすれば名詞化する」ので、「ざれ(戯れ)」は「おフザけ」の名詞となる。この語は「ざれこと=戯れ言(軽口・冗談)/戯れ事(お遊び・いい加減な振る舞い)」のような語句に用いられて古文には頻出するので、真面目な受験生にはお馴染みの語であるが、その響きに「不真面目を責める」のか「軽妙さを誉める」のかわからぬ微妙なところがあるのは、現代冗談事情にも通じるものがある。
 話を文芸世界に転じると、和歌の世界では、「真面目な短歌」とは一線を画す「面白味(=俳諧趣味)を狙ったお遊び芸としての連歌」に初めて独立した部立割いた第五代勅撰和歌集『金葉集』(1126年・源俊頼撰)に対し、第七代勅撰集『千載集』(1188年)編者の藤原俊成がその「戯れの様(ざれのさま)」の甚だしさを非難する、といった事例があった。この場合の「戯る=(あ)ざる」は、和歌を真剣な文芸として大まじめに追求しようとした俊成にとっては、「あらザルべきこと」&「文芸的なヒトならやるわけのないサル芸」だったわけである。
 事程左様に、「ざれ」は「ダジャレ(駄洒落)」にも「オシャレ(お洒落)」にも通じるものの、安易に走ればたちまち「クサレ(腐れ)」に直結するものである。きっちりとした秩序・権威の存在を前提としつつ、そうした正道から一歩(否、半歩)外れたところで踏み外す微妙な味がその生命線だけに、「何が正しいか」を見据えもせずにただ踏み外すばかりの「あざれ」は、どう転んでもただの「腐れ」にしかならない・・・「ざれ」だの「シャレ」だの「ナンセンス」だのを見事に決めようと思う者は、他の誰よりもまず「常識人」でなければならぬのであり、「オシャレ」のつもりで「オサレ」などと口走る者は、にすました「お洒落」なるお上品コトバの存在を、誰よりも強く必要としているわけである。そうした自覚があるかないかはともかくとして、既定上品路線との微妙な対比の濃淡に応じて、その者のジョークの質の程度は確実に変わってくるのだ。
 現代日本のような「秩序もルールもへったくれもありゃしない」世界では、「正道不在」という構造ゆえに、「踏み外す」という行為自体が(往々にして)論理的に不成立・・・そんなところで「オサレ」気取る連中が乱痴気騒ぎを演じれば、「クサレ」社会に堕するのは当然・・・今の日本には「マジメからのふとした息抜きの笑い」はほとんど存在せず、「他者を殊更下劣な立場へと叩き落として笑い飛ばすばかりの下卑たイジメ笑い」ばかりが醜く横行しているが、これは「戯れの本質」を知る者から見れば必然的な堕落現象。「誰もが誰かを小馬鹿にしてばっかでみんなが不機嫌・不愉快になるしかない」今のダメ日本に於いて、「ざれ」が「精神の清涼剤」として復活するためには、「まめ(実・忠実・誠実)」の復活こそが社会構造上の前提条件となるのである。
 ・・・とまぁ、こうした「まめまめしき(=あまりにも実直な正論すぎて面白味も何もない)話」を理解できる程度の心理学的素養が「現代ニホン戯れザル人種」にあるとも思われぬので、「ゲビザレ笑いは、1990年代初頭のバブル崩壊期から数十年間の、秩序が崩壊した日本国を象徴する社会病理現象であった」との記述が後の世の回想録に記載されるのは間違いないことであろう・・・・・・・・・なぁーんちゃって、ね・・・ぇ?本気にした?・・・ぁはは、ばァーか、冗談よ、じょーだん。「ざ・れ・ご・と」、そーゆーこと!(けけけ、そーいって笑い飛ばしちまえば誰も何も文句は言えないもんねー・・・あぁー、「笑い」って、楽だわ・・・ま、楽しくはないけどな・・・)

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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