古語試験:水準=【A】/語義総数=<over8>/ブロック=[05]


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〈A〉かた【方】
《原義は「(地理的な)方角」。明確な目的地に向けての強い指向性を持つ点で、類義語「」(=漠然とある方向を示す)とは異なる。が、人物の名指しを避け、その存在する方向漠然と指すことで人称代名詞の代用とする用法は、「」に共通のものである。》
〔名〕(1)〈(地理的な)ある一定の向き。〉方向。  (2)〈(特定の物事が行なわれる)。〉場所。  (3)〈(物事を論理的・分析的に切り分ける際の)向き、または、。〉方面。  (4)〈(目的を果たすために)取るべき手筋。〉手段。  (5)〈(特定の現象・行動の)発生する時間帯。〉頃合。  (6)〈(複数の集団のうち)帰属する方の集団。〉。  (7)〈(貴人への直接的言及を避けるため)場所に言及することでを指す語。〉・・・のお方。  (8)〈(物事の展開について)直接的言及を避けてぼかして言う語。〉どんな風。 〔接尾〕(1)〈(を表す名詞に付いて)ある現象・行動が行なわれるを指す。〉・・・の。  (2)〈(対照的な複数のもののうち)帰属する側を表わす。〉・・・。  (3)〈(多く、複数の)(を表わす名詞に付いて)尊敬の意を表わす。〉・・・の方(々)。  (4)〈(機能を表わす名詞に付いて)演じる役割を表わす。〉・・・

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〈A〉きこゆ【聞こゆ】
《古典的貴族社会では、意志性・主体性は「下賤の者の特性」であり、他者を介して事を為さしむるのが「尊い」ので、「自然に耳に入る」意の「聞こゆ」は、「意図的に尋ねずとも、自然にその耳に入る」=「(目下から目上に)申し上げる」の意を表わす謙譲語としても用いた。》
〔自ヤ下二〕{え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ}(1)〈(物音や人の声が)自然に耳に届く。〉聞こえる。  (2)〈(人・物に関し)その話題世間に広く伝わる。〉に聞こえる。  (3)〈(見聞きした情報から)特定の様子であろうと判断される。〉・・・と感じられる。  (4)〈(否定形の「聞こえぬ」、あるいは完了助動詞を伴う「聞こえたる」の形で)(他者の行動・発言が、論理慣習に照らして)理解可能である。〉納得できる。  (5)〈(ある特定の)臭いを漂わせる。〉・・・の臭いがする。 〔他ヤ下二〕{え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ}(1)〈「言ふ」の謙譲語。〉申し上げる。  (2)〈(人や役職のを表わす語+格助詞「と」+「聞こゆ」の形で)名称を表わす。〉・・・というである。  (3)〈(手紙などの)通信文を差し上げる。〉お便り申し上げる。  (4)〈「願ふ」の謙譲語。〉お願い申し上げる。 〔補動ヤ下二〕{え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ}〈(動詞の連用形に付けて)謙譲の意を表わす。〉・・・申し上げる

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〈A〉こころ【心】
《臓器としての「心臓」が原義。生命活動・精神活動全般の根源としての感覚は英語の「ハート」に近いが、"heart"=「情」/「理」="mind"/「魂」="soul・spirit"と英語では役割が分化するのに対し、古語の「心」は「情」・「理」(一部「魂」をも)を総括的に包含する語。》
〔名〕(1)〈(形ある肉体的なものに対する)精神的なもの。〉心。  (2)〈(外界との関係に於いて)特定の指向性を持って働く感情の動き。また、(その人物に特徴的な)精神傾向。〉気持ち気質。  (3)〈(特に恋愛感情を含まず)感情移入し、相手のことを思って振る舞う優しい気持ち。また、(恋愛の対象として)相手のことを特別に思う気持ち。〉いたわり愛情。  (4)〈(一定の基準に従って)物事を正常に判断することの出来る知性の働き。また、そうした知的判断が可能な精神状態。〉理性正気。  (5)〈(文芸的に価値あるものとされるような)物事をよく理解する心。〉風流心。  (6)〈(知的に捉えた)物事の最も重要な部分。〉本質。  (7)〈(物理的な)物事の中心、または、最も深い部分。〉ど真ん中最深部。  (8)〈(和歌の中に込められた、一見しただけではわからない)読み取るべき深い味わい。(技巧・題材・着想・主題などの客観的に論評可能な内容と、感動・趣といった主観的な内容の双方を含む)〉趣意。  (9)〈(何らかの行動をしようと)思い立つこと。特に、仏門への帰依決意すること。〉やる気発心

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〈A〉さま【様】【方】
《組成的には、漠たる方向を示す「さ」+接尾語「ま」。幾多の語義を持つが、類義語「」の持つ一点志向とは対照的な「曖昧さ・非特定性」が「様」の持ち味である。》
〔名〕【様】(1)〈(外観上の)人・物事の漠然とした様態。〉有様姿形。  (2)〈(具体性はないが)何となくそのように感じられる様子。〉。  (3)〈(有形の文芸作品や無形の対話などを)正しく成立させるために必要な一連の様式。〉形式。  (4)〈(物事の)発生の契機となった状況。〉事情。〔接尾〕【様・方】(1)〈(名詞・代名詞に付いて)漠然とした方向を表わす。〉・・・の。  (2)〈(動詞の連用形に付いて)ある物事の発生時点と同時点に於いて他の物事が発生する意を表わす。〉・・・するや否や。  【様】(3)〈(副詞などに付いて)様態を表わす。〉・・・な風に。  (4)〈(中世以降)(を表す語に付いて)敬意を表わす。〉・・・

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〈A〉しる【知る】
《「理解する」・「区別する」・「経験する」・「知り合いである」・「男女関係にある」など、意味に広がりがあるが、いずれも英語の"know"の守備範囲と重なる。古語特有の語義としては、「言ひ知らず」(何とも言えず)のように不可能の意を添える補助動詞的用法がある。》
〔自ラ下二〕{れ・れ・る・るる・るれ・れよ}〈(主に否定形の「知れず」で)他者の知るところとなる。〉知られる。 〔自ラ四〕{ら・り・る・る・れ・れ}〈(知識・思考・感覚・想像といった)知力を用いて対象を理解する。〉わかる。 〔他ラ四〕{ら・り・る・る・れ・れ}(1)〈(知識・思考・感覚・想像といった)知力を用いて対象を理解する。〉理解する。  (2)〈(異なる他の物事との)を明確に認識する。〉区別する。  (3)〈(伝聞情報としてではなく)直接的に体験して対象の実情を知る。〉経験する。  (4)〈(非恋愛的関係として)社会的に人と関わる。〉付き合いがある。  (5)〈(恋愛の対象として)異性と関わる。〉男と女の関係にある。  (6)〈(人・物に関して)保護・管理の責任をきちんと果たす。〉世話をする。  (7)〈(下に打消の語を伴って)不可能の意を表わす。〉・・・することができない

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〈A〉ひと【人】
《語義は極めて多岐に亘るが、古語ならではの要注意語義は、凡人と対比しての「ひとかどの人物」、主君の命令に応じて動く「手下」、相手に直接的に呼び掛ける形の対称の人称代名詞「あなた」あたりであろう。》
〔名〕(1)〈(無生物や他の動物と対比しての)人間。〉。  (2)〈(自分自身と対比しての)他の人間。〉人々他人。  (3)〈(その脈絡で話題に上っている)特定の人物。(多く、恋慕の対象について言う)〉あの人。恋人。  (4)〈(世間並みの凡人と対比しての)立派な人材。〉大人物。  (5)〈(子供と対比しての)一人前の人間。〉大人。  (6)〈(主君に)命じられるがままに動く受動的存在としての人員。〉使いの者。  (7)〈(他者と)人を区別したり規定したりする社会的属性。〉身分人柄。  (8)〈(動物の住処の山里と対比しての)人間が暮らす世界。また、人間が暮らしている気配。〉人里人気。 〔代名〕〈対称の人称代名詞。〉あなた

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〈A〉まゐる【参る】
《上代の「行く」・「来」の謙譲語「参る」の連用形「まゐ」に「入る」が付いた「参入る」が転じた語。原義は「貴人の許・貴所に行く」の謙譲語。他動詞としては「差し上げる」の謙譲語/「・・・(名詞)+参る」形で「・・・してさしあげる」/「飲食着用行為全般」の尊敬語となる。》
〔自ラ四〕{ら・り・る・る・れ・れ}(1)〈(貴人の近くや貴所へ)「行く」の謙譲語。〉参上する。  (2)〈(宮中貴人の下で)仕事をさせていただく。〉お仕えする。  (3)〈(皇后中宮女御などの立場で)天皇として宮中入らせていただく。〉入内する。  (4)〈(寺社・陵墓など)神聖な場所に出向く。〉参詣する。  (5)〈「行く」・「」の丁重語。〉参ります。 〔他ラ四〕{ら・り・る・る・れ・れ}(1)〈(貴人に対して)「与ふ」・「遣る」の謙譲語。〉差し上げる。  (2)〈(行為の対象に敬意を表して)(「名詞+参る」の形で)「」・「行ふ」の謙譲語。〉・・・して差し上げる。  (3)〈(行為主に敬意を表して)「」・「行ふ」その他の動詞の尊敬語。〉・・・なさる。  (4)〈「食ふ」・「飲む」・「着る」その他の動詞の尊敬語。〉お召しになる。

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〈A〉みゆ【見ゆ】
《主体的な「見る」に、自発・可能・受身の上代の助動詞「ゆ」を付けた語なので、自然発露的・受動的な語感がある(「結婚する」の語義が「女性限定」で、男の場合「見る」を使う点も象徴的だ)が、意図的に「出現する」/「(他者の目に)・・・であるように見せる」は例外。》
〔自ヤ下二〕{え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ}(1)〈(こちらの意思とは無関係に、何らかの光景が)視界に飛び込んでくる。〉見える。  (2)〈(形容詞・形容動詞の連用形に付いて、または「・・・見ゆ」の形で)そのようなものとして目に映る意を表わす。〉・・・に感じられる。  (3)〈(常識的なものとして)世の中に存在し、容易に確認できる。(多く「に見え」などの否定形で用いる)〉世にある。  (4)〈(人・物が)その姿を現わす。〉出現する。  (5)〈「」の尊敬語。〉お越しになる。  (6)〈(他者の目を意識して)作為的に振る舞って、相手に何らかの印象を与えようとする。〉・・・に見せかける。  (7)〈(人と)顔を合わせる。〉対面する。  (8)〈(性が、性と)夫婦として結ばれる。〉となる。

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〈A〉よ【世・代】
《竹の「節」(現代では「ふし」だが古語では「よ」)と同音・同発想の語。成長の節目ごとに刻まれるこの「よ」を「時間的区切り」と意識して生じた語が「世・代」で、その根底にあるのは「画期」であって「区画」ではない(=時間系の語であって空間系の語ではない)。》
〔名〕(1)〈(人が)生まれてから死ぬまでの間の時間・経験。または、その長さ。〉一生寿命。  (2)〈(仏教語)前世(生まれる前の世)・現世(この世)・来世(生まれ変わる世)の三世。または、正法・像法・末法の三つの時代区分。〉三世。  (3)〈(歴史的に)特定の支配者天皇将軍など)が君臨した時代として、他の時代と区分される時代。〉・・・時代。  (4)〈(社会的に)様々に移り変わる人間世界全般。また、(歴史的に)その時代特有の風潮によって他の時期とは区分される世の中。〉世間時勢。  (5)〈(人・物事が)今の状態とは異なる状態で存在したある特定の時。〉時期。  (6)〈(社会的に)人が置かれた立場軽重。(経済的に)人の暮らしの状態。〉境遇貧福。  (7)〈(地理政治的に)人間が暮らす領域。〉世界。  (8)〈(出家隠遁した立場の人間から見て)世俗的欲望に満ちた世界、また、その世界の人々やその欲望。〉俗世間世俗的欲望。  (9)〈(経済学的に)生きるためにしなければならない営みや、その状態。〉生活暮らし向き。  (10)〈(世間から見た)社会的な評価位置付け。〉世評。  (11)〈(愛情の濃淡から見た)男女間の関係の緊密さ。〉(夫婦)仲

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   29  ♪♪ <質問箱> [単語集] 
〈A〉よし【良し・好し・善し・吉し】
《十数種にも及ぶ語義があるが、基本的には、「善し悪し」の表現に見る通り、「よし」は「あし」と対を成して「積極的な好感満足」を表わす語。「よし」の積極的讃辞に対し、消極承認を表わす語が「よろし」で、その対義語は「わろし」、という図式も押さえておこう。》
〔形ク〕{から・く/かり・し・き/かる・けれ・かれ}(1)〈(一般的に)好感が持て、高く評価できる。〉素晴らしい。  (2)〈(主観的に)快感を伴う。〉快い。  (3)〈(外見が)美麗好感が持てる。〉美しい。  (4)〈(論理道義に照らして)間違っていない。〉正しい善良だ。  (5)〈(特定の物事を行なう上で)しっかり目的用途合致している。〉相応しい。  (6)〈(特定の物事に関して)対処する術をよく弁えている。〉上手だ。  (7)〈(特定の物事を行なう上で)偶然良い条件が整っている。〉縁起がよい。  (8)〈(経済的に)潤っており、勢いがある。〉富裕だ。  (9)〈(社会的に)高い地位にある。〉高貴だ。  (10)〈(社会的地位の高さに伴う知的卓越性に言及して)物事やその道理をよく弁えている。〉聡明だ。  (11)〈(人と)良好な社会的関係を保っている。〉親しい。  (12)〈(「とも」や「ても」に続けて)そのようにしても問題はない。〉・・・してかまわない。  (13)〈(動詞の連用形に続けて、補助動詞的に)容易にそうすることができる意を表わす。〉・・・(し)易い

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   30  ♪♪ <質問箱> [単語集] 
〈A〉わたる【渡る】
《海洋を古語では「海」・「わたつうみ・わたつみ・わだつみ=海つ」と呼ぶが、これと同根語で、広い空間をこちら側からあちら側へ直線的に移動する意を表わす語が「渡る」。空間移動を原義としつつ、派生的に、時間的広がりにも言及する様々な語義を持つ。》
〔自ラ四〕{ら・り・る・る・れ・れ}(1)〈(川・海・湖など)水面上を、こちら側からあちら側へと直線的に移動する。〉渡航する。  (2)〈(太陽・月などの天体が)移動する。〉横切る。  (3)〈(部屋や家、他者のいる場所へと)地上を、特定の目的地へ向けて移動する。〉行く来る。  (4)〈(部屋や家、他者のいる前を)立ち止まることなくそのまま移動を続ける。〉通過する。  (5)〈(影響や効力が)特定の範囲に広がる。〉広く通じる。  (6)〈(中世以降、多く「わたらせたまふ」の形で)「あり」・「をり」の尊敬語。〉いらっしゃる。  (7)〈(時間的に)一定の期間を送る。〉過ごす。 〔補動ラ四〕{ら・り・る・る・れ・れ}〈(動詞の連用形に付いて)広い空間的・時間的範囲にまたがる意を表わす。〉広く・・・する。長い間・・・する。

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    31  ♪♪ <質問箱> [単語集] 
〈A〉ゐる【居る】
《「立居振舞」の表現に見る通り、「立つ」の対義語が「居る」。「座っている」・「動かず一箇所に留まる」・「ある場所に一時的/恒常的に存在する」・「ある地位に就く」・「ある場所に自然物が生じる」など、語義は多様。「が/をゐる」(激情の鎮静)の意にも要注意。》
〔自ワ上一〕{ゐ・ゐ・ゐる・ゐる・ゐれ・ゐよ}(1)〈(人が)膝や腰を曲げた姿勢で一箇所に留まる。〉座る。  (2)〈(鳥・雲・波などの)自然界の存在が、動かず一箇所に留まる。また、動きを止める。〉じっとしている。  (3)〈(特定の場所に)一時的または恒常的に存在する。〉る。む。  (4)〈特定の地位に就く。(天皇皇后斎宮などの位についていう)〉・・・である。  (5)〈(氷柱・水草など)自然界の存在が、特定の場所に生じる。〉発生する。  (6)〈(「がゐる」の形で)高ぶった感情がおさまる。〉立腹おさまる。 〔他ワ上一〕{ゐ・ゐ・ゐる・ゐる・ゐれ・ゐよ}〈(「をゐる」の形で)何らかの行動によって、高ぶった感情をおさめる。〉鬱憤晴らす。 〔補動ワ上一〕{ゐ・ゐ・ゐる・ゐる・ゐれ・ゐよ}〈(動詞の連用形に付けて)動作が継続している意を表わす。〉・・・し続ける。

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