あたら【惜】〔連体〕〔副〕

   [43] あたら【惜】〔連体〕〔副〕

〈B〉 あたら【惜】
《形容詞「あたらし」の元になった語で、元来は名詞直前に置かれて接頭語的機能を果たしていたものが、中古以降独立的に用いられるようになった。》
〔副〕
  (1) 〈価値あるものが、正当に扱われないことや、失われてしまうことを、惜しむ気持ちを表わす。〉 勿体なくも。惜しくも。残念にも。   
〔連体〕
  (1) 〈不当に低評価の物事や、消え去るのが惜しまれる物事に付ける。〉 折角の。惜しむべき。もったいない。立派な・・・なのに。
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別に「あたらし」くもない「あらたし」きこと
 古語の「あたらし」は、現代人を混乱させる語の一つである。その語源は「本来、高い価値を持つものなのに、不当に低評価を受けており、応分の価値に当たるものとしては扱われていない」ことを「残念だ・・・本来の価値に当たるようにしたい」と嘆くもの。この「・・・したい」の意味を表わす形容詞語尾「・・・し」は、「ゆかし=素晴らしいものなので、その内容をもっと深く探求すべく奥底まで’行きたい’」と同種のものである。
 そんな「あたらし【惜し】=惜しいなぁ、残念だなぁ、本当はもっと高く評価されて当然なのになぁ」が、いつの間にやら「あらたし【新し】=目新しい、今までにないものだ」との音調的錯誤から、「新しい」の語義一色へと塗りつぶされて、もはや「惜しい」の意味を表わさなくなってしまった現象は、古来幾度となく繰り返され続けてきた日本語の音化け・意味化け現象の分の1の事例・・・「新しい」ことでも何でもない、古くて残念な、和語の伝統芸、である。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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