さすが【流石・遉】〔形動ナリ〕〔副〕

   [687] さすが【流石・遉】〔形動ナリ〕〔副〕

〈A〉 さすが【流石・遉】
上代の副詞「然すがに」の別読み語で、前述の内容を受けつつ「そうは言っても・・・」という逆接に加えて、現代語同様の「流石!」として後述の讃辞を導く用法もある。形容動詞としても用い、副詞同様の逆接を表わす他、事態を否定的に受け止める「やはり何となく気が咎める」の意も表わす。》
〔形動ナリ〕 {なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ}
  (1) 〈(相反する内容を持つ前後の脈絡をつないで)逆接的陳述を導く。〉 ・・・ではあるが、そうは言ってもやはり~である。いくら・・・だとしても、~はあるまい。確かに・・・だが、それでも~だ。いかに・・・とは言え、~というのはいかがなものか。   (2) 〈(特に照応する直前の脈絡を持たずに)事態に対する否定的な心情を表わす。〉 気がめる。感心しない。いけないことのような気がする。   
〔副〕
  (1) 〈(相反する内容を持つ前後の脈絡をつないで)逆接的陳述を導く。〉 ・・・ではあるが、そうは言ってもやはり~である。いくら・・・だとしても、~はあるまい。確かに・・・だが、それでも~だ。いかに・・・とは言え、~というのはいかがなものか。   (2) 〈(特に照応する直前の脈絡を持たずに)予想・期待・評判通りの事態であることを強調的に表わす。〉 さすがは。なるほど。やっぱり。いかにも。どうしてどうして。何と言っても。何のかんの言ってもやはり。
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【しかすが】が【さすが】に化けて【流石】
 現代では「さすがはカタホくん、考えることが違うわ!」などとして「期待通り、見事にやってくれた!」の讃辞を表わし、どういうわけか「流石」なるヘンテコ当て字まで宛がわれているのが「さすが」だが、この語の源流は「然すがに」であり、その読み方は中古では「さすがに」だが、上代には「しかすがに」であった。
 「鹿+酢+蟹」などと書けば野趣溢れる古代の宴席料理みたいだが、真面目な語源学的組成は「然(そういう)+す(在り)+が(処=場所)+に(地点)」で、「そういう所に身を置いている」である。従って元来は順接:「そういう次第でありますから(such being the case)」であったこの表現が、やがて逆接:「そういう状態ではあるものの(be that as it may)」に転じ、中古にはその読みも「しか→さ」に変化して「さすがに=そうは言ってもやっぱり・・・だ」となったものである。
 やがて、「何のかんの言っても、やっぱり***、大したもんだねぇ」(例:一頃の勢いはないとはいえ、’さすが’は日本人、ゴールデンウィークの海外での散財ぶりはまぁ見事だねぇ)という「全般的には否定的な陳述の中で、それにもめげずに光る肯定的な何か」を持ち上げる言い回しとしての「さすが」が派生的に(鎌倉期あたりに)生じたが、その非本源的語義こそ今や主流の「流石」とは、さすがは日本語、時代の流れの中でゴロゴロ横滑りを繰り返すその飽くなき石、もとい、意志には(毎度のことながら)「いょっ、流石(ナガレイシッ)!」の賛嘆(or惨憺)のし声を禁じ得ぬものがあるではないか。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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