かなし【愛し】【悲し・哀し】〔形シク〕

   [441] かなし【愛し】【悲し・哀し】〔形シク〕

〈A〉 かなし【愛し】【悲し・哀し】
《「耐えおおせる」の意の補助動詞「かぬ」と同根語とされ、「耐えかねるほど痛切な思い」が原義。現代では「個人的悲嘆」のみを表わすが、古語では「胸キュンの愛しさ」・「魅入られる趣深さ」・「感に堪えぬ見事さ」・「胸が痛む気の毒さ」など、表現範囲が遙かに広い。》
〔形シク〕 {しから・しく/しかり・し・しき/しかる・しけれ・しかれ}
【愛し】   (1) 〈(どうしていいのかわからないほどに)可愛くておしくて仕方がない。〉 身にしみてしい。たまらなく可愛い。   (2) 〈(思わず見入ってしまうほど)強く心引かれる何かがある。〉 しみじみと趣深い。身にしみる興趣がある。心を揺さぶる魅力がある。実に興味深い。   (3) 〈(多く、連用形「かなしく」・「かなしう」の形で)思わず感心してしまう。〉 お見事。ご立派。素晴らしい。さすが。あっぱれ。拍手したくなる。やんややんや。いいぞ。
  【悲し・哀し】   (4) 〈(傍で見ていて)自分のことのように辛く感じる。〉 気の毒で仕方がない。あまりにかわいそうだ。身につまされる思いだ。見るからに哀れだ。   (5) 〈(理想と現実との食い違いを前にして)心が満たされず、やりきれない。〉 悲しい。辛い。残念だ。遺憾だ。嘆かわしい。溜息が出る。   (6) 〈(受身表現の連用形「かなしう・・・る/らる」の形で)他者の仕打ちに対しるさまを表わす。〉 何ともひどいことに。くやしくも。いまいましいことに。しゃくに触ることには。残念ながら。手ひどく。あまりと言えばあんまりなことだが。
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「たまらねー」のが【かなしー】の
 現代ではひたすら「悲しい」ばかりだが、古典時代には「かわいー!」や「すばらしー!」の感慨をも表わした「かなし」は、語源的には「かぬ」につながる語。「耐え<かぬ>=我慢できないーっ!」と考えれば、耐え難いほどの「悲しさ」にも、たまらんほどの「かわいさ」にも、感に堪えぬ「趣深さ」にも通じるその本質がわかるであろう。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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