【事割り】と【断わり】

   [270] 【事割り】と【断わり】
「古文単語千五百Mastering Weapon」 No.937【理・断り】
-切り分けるには、基準が必要-
 現代日本語では多く「拒絶」の意味(例:「押し売りお断わり!」)で用いられ、「道理」の意味では滅多に用いられぬ「ことわり」であるが、元来の組成は「事+割る」であるから、「物事を切り分けること」が原義であり、割り切るための基準としての「論理・道理・正しい考え方」がその基本的意味である。
 円形の大きなケーキのを、じぃーっと見つめる複数の子供達の全員に平等に行き渡るよう切り分ける作業に従事したことのある人ならわかるであろう ― 「あぁーっ!ズルい、**ちゃんの分だけ大きいっ!ひいきしてるー、ちゃんと分けてよー!」 ― よほど「正確に割る」ことをしないと子供は納得しない。虎視眈々と目を光らせる「ひいき監視員」の子供たちを納得させるには、「割り切る基準をしっかり説明しつつ、正しく切り分ける」律儀さが必要なのだ(・・・わざと大きめに切ったやつを’これ、あげる’と言って黙らせる手もあるけどね)。
-「YES」に理由はいらない/理由説明が必要なのは「NO」だけ-
 人と人とのコミュニケーションに関しては、次のような原則を覚えておく必要がある:
A)他者からの働きかけに対し、「NO!」としてこれを拒絶する場合には、単なる拒絶の意思表示のみならず、拒絶する理由をも添えて出さねば、相手は納得して引き下がってはくれぬもの。
 フラれ男が「俺のどこがキライなわけ?」などとして食い下がる図は、女性から見て何とも醜いばかりでますますキライ、ということになるのが現実ながら、心理学的に言えばこの「理由を求める」行動はもっともなことである。何故なら、人間であろうと動物であろうと植物であろうと、全ての生き物の行動原理は次の通りだから、である:
B)生き物はみな、特別な理由がない限り、行動を停止しないもの;であるから、行動を停止するためには、何らかの理由付けが必要なもの。特別な理由付けを与えられて停止させられない限り、生き物はみな(何の理由もなくとも)惰性的に行動し続けるもの。即ち、生き物の営みはみな「YES」が基本/「NO」は例外。基本的行動たる「YES」には理由説明など何もいらない(ほうっておけば万物は行動し続け、生き続けようとするのが自然なこと);対照的に、行動の停止という意志的営みである「NO」は然るべき理由がなければ遂行不可能。
 かくて、’事を割り切る’「ことわり=道理」は、それを最も必要とする’行動の停止命令’「断り=拒絶」の語義へと自然に転じて行くこととなったわけである。無論、「停止」から「始動」への行動様態の変化を促すための「ことわり=・・・だから、ね、~しましょうよ!:Let’s begin because …」という説得の「理」もまたある訳だが、何かを「始める」ことよりも、「やめる」ことの方が遥かに困難(=はっきりと納得できる「ことわり」が必要なもの)なのだ。
 ・・・というわけで、女性のみなさん、男をフる時には、それなりの理由を与えてやるのが慈悲(&保身の得策)というものです。「わたし、他に好きな人がいるの」とか、嘘でもいいから言ってあげてくださいな:「それって、誰?」とか聞いて来るほどアホな男なら、その時こそ例の一言「ごめんなさい・・・」の出番です。最初から「ごめんなさい」の「断わり」一点張りではダメ(ストーカーを生むばかりですよ);「あなた以外の男性が好きだから」とかの「理」付きで突き放してこそ、「NO」へと相手を動かすことができるんですから。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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