【かこつけ】て、(かっこつけ)ては、マズいかな?

   [168] 【かこつけ】て、(かっこつけ)ては、マズいかな?
「古文単語千五百Mastering Weapon」 No.1158【託つ】
 日本語は世界にも稀なる横滑り型言語なので、語源学的にも論理的にもあり得ない言葉の使い方が多すぎて、改まって取り上げて客観的考察を試みれば、大抵の人々(日本人であれ外国人であれ)の反応は「まさか、そんな馬鹿な!」・「何言ってるんだ、こいつ!」となる。「かこつ」なる古語の変遷にも、この種の「大方のウケが良くなさそうな横滑り物語」を見出すことができる・・・どうせ受け入れられないことを承知しつつ、言ってみようか:
 四段活用動詞の「かこつ」は{かこた(ズ)・かこち(ケリ)・かこつ(。)・かこつ(トキ)・かこて(ドモ)・かこて(!)}と活用する・・・が、現代日本語に残る「かこつ」は、「無聊を託つ(ぶりょうをかこつ)=あぁヒマだ、なぁーんにもすることがない、とブツクサ文句を言う」のような文語表現に原形を留めるのと同時に、「多忙に<かこつけて>無視を決め込む」のような変形を遂げてもいる。
 「かこつけ(テ)」は連用形であるが、この連用形を持つ活用法は{かこつけ(ズ)・かこつけ(ケリ)・かこつく(。)・かこつくる(トキ)・かこつくれ(ドモ)・かこつけよ(!)}=下二段活用であって、四段ではない。この変化をもたらしたものは、「かこつ」の音でもなければ意味でもない;その漢字表記「託つ」のなせるわざである。
 「託つ(かこつ)」の表記に極めて近く、意味もまた重なる語に「託け(ことづけ)」がある:動詞活用すれば{ことづけ(ズ)・ことづけ(ケリ)・ことづく(。)・ことづくる(トキ)・ことづくれ(ドモ)・ことづけよ(!)}の下二段活用となる。この「ことづく」には、現代日本語にそのまま残る「言付け(=伝言)」の意味の他に、「かこち」と同義の「口実・かこつけ・こじつけ」の意味もある・・・がゆえに、両者の「託」の字の共通性から、「託つ(かこつ)」+「託く(ことづく)・・・言付く(ことづく)」÷2=「託付く(かこつく)」なる非論理的錯覚転変劇が生じたことに、疑念の余地はない(この種の事例は日本語の場合それこそ腐るほど大量に存在するのである)。
 このような横滑りを平然と演じる日本語であるから、「かこつく」・「かこつける」なる語との音調的類似性を持つ「格好(が)付く」・「カッコつける」なる言い回しにも、「意味の上では"かっこう"とは縁遠く思われる"付く"がついたのは、音が似てるだけ、という理由で例の"かこつく"・"かこつける"を引っ張っただけ?」という形で託ける(かこつける=事態の原因は他の何物かにあり、とする)のもまた、あながち無理な推論とは言えぬように思われる・・・ので、「格好(が)付く=何とか見栄えがする形となる。」・「格好付ける=中身がないのに外見だけは立派そうに見せる」(かこつ/かこつく、の横滑り語か?)とカッコ付き語源説として提示しておく。
 などと書くとまた、日本語をマトモに知らぬが故に日本語の絶対的正しさ・美しさを妄信してやまぬ((○)止まぬ (×)病まぬ)人々は、この筆者の推論に「かこち顔=悪いのはオマエだ!という態度のブー垂れ顔」を返したり、「真珠を投げつけられたブタの猛進」で突っかかってきたりするかもしれない・・・(ので、あくまでこれはカッコ付きの仮説ということで、軽く逃げておく)

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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