「いたいけ」自衛法

   [70] 「いたいけ」自衛法
「古文単語千五百Mastering Weapon」 No.627【幼けなし・稚けなし】
 「’いたいけ’な幼児」とは現代もなお使われる文語だが、これは元来「痛い気」。ちびっ子は、見るからに、小さく、か弱く、危なっかしくて、「わーっ!」とかいいながら走り回っては「ドタッ!」とコケるその姿を見ると、周りの大人はまるで我がことのように「ぁイタっ!」とか声を上げてしまうほど、放っておけない、思わず手を差し伸べて守ってあげたい気にさせられる・・・それが「イタい気」なる子供の発するオーラ(aura:雰囲気)である。
 「いたいけなり」=「思わず手を差し伸べてあげたくなるかわいらしさ」・・・自分で自分の身を守る手段に乏しい弱小なる存在は、強大なる何か/誰かの庇護本能にキュンと訴えかけることでその生存適性を高めるもの、という最高の一例であろう。人の子ならずとも、子猫も子犬もカエルの子も、カワイクないちびっ子なんて、自然界に存在しない・・・逆に言えば、幼少段階でかわいくなかったチビすけたちは、強い連中に守ってもらえずに、みな絶滅してしまって既にこの世にない、ということかもしれないが。
 生き残りたければ、他者の攻撃を無力化する圧倒的強さを身に付けるか、他者の攻撃心そのものを無力化する圧倒的モロさを見せつけるか・・・獅子の王道を歩むか、猫撫で声出してお腹出してコロンと横たわって「もー、好きにしてー」と強者の慈愛に訴えかけるか・・・後者の方が楽には見えるが、慈悲にすがって生きてる弱者のくせに、多少なりとも強がってみせたが最後、惨めに踏み潰されておしまい、というのが「思い上がった弱者」の末路である。筆者の知る限り、「守られてる」くせに「いばってる」弱者で、それでも強者が「喜んでかわいがってる」生き物は、「猫」ぐらいである・・・「いたいけ自衛法」の道はけっこう険しいものなのだ。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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