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『扶桑語り』
No.01「夢にねぶる娘」
-平安「助動詞」総覧-


presented by之人冗悟(Noto Jaugo)(https://fusau.com/)



__り【り】
『接続:{四段の命令形・サ変の未然形}』
〔助動ラ変型〕{ら・り・り・る・れ・れ}
  (1)〈(進行形)動作の継続・進行を表わす。〉(今)・・・ている。・・・している。・・・中だ。  (2)〈(結果の存続)既に完了した動作の結果が今なお余韻を残していることを表わす。〉(結果として)・・・てある。・・・ている。・・・たのだった。  (3)〈(完結)動作が既に終結したことを表わす。(多く、動作の終了・結果に対する残念な気持ちや、もう取り返しは付かないという感じを含むが、過去助動詞「き」・「けり」の代用的語法もある)〉(もう)・・・てしまった。・・・した。・・・た。
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__ず【ず】
『接続:{未然形}』
〔助動特殊型〕{ず/(な)/ざら・ず/(に)/ざり・ず/○・ぬ/ざる・ね/ざれ・○/ざれ}
  (1)〈(打消)(用言の未然形に付いて)その陳述内容を否定する。〉・・・ない。・・・しない。・・・でない。
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__けり【けり】
『接続:{連用形}』
〔助動ラ変型〕{(けら)・○・けり・ける・けれ・○}
  (1)〈(伝聞・回想)(話者・筆者の直接体験としてではなく、他者から伝え聞いた話としての)過去の事柄について述べる。〉・・・た(そうだ)。・・・のだそうだ。・・・ということだ。・・・との話である。  (2)〈(気付き)(以前から存在する事柄について)発見したり印象を新たにしたりした意を表わす。〉・・・だったのだなあ。・・・思えば・・・だったことよ。  (3)〈(過去からの継続)(過去に発生した事柄が)現在までずっと続いている意を表わす。〉・・・てきた。・・・ていた。ずっと・・・た。
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__なり【なり】
『接続:{体言・連体形}』
〔助動ナリ型〕{なら・なり/(に)・なり・なる・なれ・(なれ)}
  (1)〈(断定)(体言・活用語の連体形に付いて)特定の状態・立場・資格にある意を表わしたり、事情を説明する。(多く、連用形「に」+「あり」の分離形を取り、間に接続助詞「て」・係助詞「か(は)」・「や(は)」・「は」・「も」・「ぞ」・「こそ」・「なむ」を挟み込む)〉・・・なのである。・・・だ。・・・である。・・・の立場だ。・・・状態だ。・・・だからこそなのだ。  (2)〈(存在・所在)(場所を表わす名詞に付いて)その場所に存在する意を表わす。〉・・・にいる。・・・にある。・・・に位置する。・・・に留まっている。
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__むず【むず】
『接続:{未然形}』
〔助動サ変型〕{○・○・むず(んず)・むずる(んずる)・むずれ(んずれ)・○}
  (1)〈(未来の推量)将来の事柄について推量する。(存在・様態の表現に付いて)現在の未確認の事柄について推量する。〉・・・ろう。・・・だろう。・・・しそうだ。  (2)〈(意志・願望)(自分自身が)ある行動を取る意志・願望・予定がある意を表わす。(勧誘)(自分達が)ある行動を取ることを積極的に促す。〉・・・しよう。・・・したい。・・・するつもりだ。・・・を望む。・・・することになっている。  (3)〈(勧誘・希望)(他者が)ある行動を取ることを(話者が)望む意を表わす。〉・・・てほしい。・・・してくれないか。・・・ならいいのに。・・・しなさい。  (4)〈(仮想・婉曲)(連体形・準体法で用いて)ある事柄が仮に実現した場合の、その事柄について、仮想の形で、または、遠回しに述べる。〉もし・・・したとして、その~。仮に・・・としてその~。例えば・・・のような。
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__む【む】
『接続:{未然形}』
〔助動マ四型〕{○・○・む(ん)・む(ん)・め・○}
  (1)〈(未来の推量)将来の事柄について推量する。(存在・様態の表現に付いて)現在の未確認の事柄について推量する。〉・・・ろう。・・・だろう。・・・しそうだ。  (2)〈(意志・願望)(自分自身が)ある行動を取る意志・願望・予定がある意を表わす。(勧誘)(自分達が)ある行動を取ることを積極的に促す。〉・・・しよう。・・・したい。・・・するつもりだ。・・・を望む。・・・することになっている。  (3)〈(勧誘・希望)(他者が)ある行動を取ることを(話者が)望む意を表わす。(多く、已然形係り結び「こそ・・・め」の形を取る)〉・・・てほしい。・・・してくれないか。・・・ならいいのに。・・・しなさい。  (4)〈(仮想・婉曲)(連体形・準体法で文中に用いて)ある事柄が仮に実現した場合の、その事柄について、仮想の形で、または、遠回しに述べる。〉もし・・・したとして、その~。仮に・・・としてその~。例えば・・・のような。
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__らる【らる】
『接続:{四段&ナ変&ラ変以外の未然形}』
〔助動ラ下二型〕{られ・られ・らる・らるる・らるれ・られよ}
  (1)〈(自発)意識せずとも自然発露的にそうなる意を表わす。(通例、打消の語を伴わない。命令形はない)〉自然と・・・られる。思わず・・・する。・・・ずにはいられない。  (2)〈(可能)その動作を実現することができる意を表わす。(中古までは、通例、打消の語を伴う。命令形はない)〉・・・できる。・・・られる。・・・可能だ。  (3)〈(受身)他者からの作用を受ける意を表わす。(通例、無生物は主語にならない)〉・・・れる。・・・られる。・・・される。・・・をる。・・・の目にう。  (4)〈(尊敬)動作主を敬う意を表わす。〉・・・なさる。・・・される。お・・・になる。・・・られる。
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__ぬ【ぬ】
『接続:{連用形}』
〔助動ナ変型〕{な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね}
  (1)〈(完了)既に完了・終結した動作・作用・状態について、確認の意を込めて述べる。〉・・・てしまった。・・・てしまう。・・・た。  (2)〈(確述)(推量助動詞「む」・「まし」・「べし」・「らむ」などと共に用いて)その実現が確実視される未来の事態や未確認の現在の事態について、確信を持って強調的に述べる。また、命令形で用いて強い希望を表わす。〉きっと・・・。確かに・・・。間違いなく・・・。全く・・・。
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__たり【たり】
『接続:{ラ変以外の連用形}』
〔助動ラ変型〕{たら・たり・たり・たる・たれ・たれ}
  (1)〈(進行・継続)(非持続性の)ある動作・作用が(その記述の時点に於いては)進行・継続中である意を表わす。〉・・・ている。・・・てある。ちょうど・・・している。・・・の最中である。  (2)〈(残余型完了)既に完了した事態・動作・作用の結果が(その記述の時点に於いてなお)残存し、余韻を感じさせる意を表わす。〉・・・た。・・・てある。・・・となっている。  (3)〈(終結型完了)ある動作・作用が既に完了し、確定した既成事実となってしまった意を表わす。〉・・・した。・・・た。もう・・・した。既にもう・・・てしまった。もはや・・・となった。
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__き【き】
『接続:{連用形(カ変&サ変には特殊な接続あり)}』
〔助動特殊型〕{(せ/け)・○・き・し・しか・○}
  (1)〈(体験としての過去)(話者・筆者・作中人物が直接的に体験した)過去の事柄について述べる。〉・・・た。・・・した。  (2)〈(記憶としての過去)(話者・筆者が直接体験した訳ではないが、記憶の中で事実としての重みを持っている)過去の事柄について述べる。〉・・・た。・・・した。
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__つ【つ】
『接続:{連用形}』
〔助動タ下二型〕{て・て・つ・つる・つれ・てよ}
  (1)〈(完了)動作・作用・状態が既に完了・終結した意を表わす。〉・・・てしまった。 ・・・てしまう。・・・た。  (2)〈(確述)(推量助動詞「む」・「まし」・「べし」・「らむ」や、補助動詞「あり」・「なし」・「り」、状態を表わす形容詞・形容動詞などと共に用いて)その実現が確実視される未来の事態や未確認の現在の事態について、確信を持って強調的に述べる。また、命令形で用いて強い希望を表わす。〉きっと・・・。確かに・・・。間違いなく・・・。全く・・・。
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__る【る】
『接続:{四段&ナ変&ラ変の未然形}』
〔助動ラ下二型〕{れ・れ・る・るる・るれ・れよ}
  (1)〈(自発)意識せずとも自然発露的にそうなる意を表わす。(通例、打消の語を伴わない。命令形はない)〉自然と・・・られる。思わず・・・する。・・・ずにはいられない。  (2)〈(可能)その動作を実現することができる意を表わす。(中古までは、通例、打消の語を伴う。命令形はない)〉・・・できる。・・・られる。・・・可能だ。  (3)〈(受身)他者からの作用を受ける意を表わす。(通例、無生物は主語にならない)〉・・・れる。・・・られる。・・・される。・・・をる。・・・の目にう。  (4)〈(尊敬)動作主を敬う意を表わす。〉・・・なさる。・・・される。お・・・になる。・・・られる。
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__けむ【けむ】
『接続:{連用形}』
〔助動マ四型〕{○・○・けむ(けん)・けむ(けん)・けめ・○}
  (1)〈(不確実な過去の推量)過去に存在したと思われる事態について想像して述べる。〉・・・ただろう。・・・たのであろう。  (2)〈(過去の状況の推量)(疑問の語を伴わずに)過去に存在した事態の背後にある事情について、その原因・方法などに関する確信のない推量を表わす。〉・・・たからこそだろう。・・・ゆえのことだろう。・・・だったということであろう。・・・ということであろう。  (3)〈(過去の状況の推量)(疑問の語を伴って)過去に存在した事態の背後にある事情について、その原因・方法などを相手に尋ねたり、不思議がったりする。〉~に・・・だったのか?何故・・・だったのだろう?いつ・・・たのだろう?どこに・・・たのだろう?どうやって・・・たのだろう?誰に・・・たのだろう?  (4)〈(過去の伝聞・婉曲)(多く、連体形で)過去の事柄について、伝え聞いた話として、または、断定回避する気持ちを込めて述べる。〉・・・とかいう。・・・とされている。・・・だそうだ。
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__らむ【らむ】
『接続:{終止形・ラ変の連体形}』
〔助動ラ四型〕{○・○・らむ(らん)・らむ(らん)・らめ・○}
  (1)〈(現在の事柄の推量)自身が直接経験しているわけでない現在の事柄について推量する意を表わす。〉今頃は・・・だろう。・・・のであろう。・・・ていよう。  (2)〈(現在の事柄の原因推量)(原因・理由を表わす表現を伴って)現在の事柄の生じた原因・理由について推量する意を表わす。〉・・・だからこそ~のだろう。~なのは・・・故のことだろう。  (3)〈(現在の事柄の原因に関する疑問)(原因・理由を表わす表現は伴わず、疑問の意を表わす語を伴って)現在の事柄の生じた原因・理由がわからない意を表わす。〉何故に・・・なのだろう。どうして・・・だろうか?・・・なのは~か?  (4)〈(現在の事柄の原因に関する疑問)(原因・理由を表わす表現も、疑問の意を表わす語も伴わずに)現在の事柄の生じた原因・理由がわからない意を表わす。〉何故に・・・なのだろう。どうして・・・だろうか?・・・なのは~か?  (5)〈(伝聞)(多く連体形で用いて)他者から伝え聞いた情報について、断定回避的に述べる。〉・・・とかいう。・・・だそうだ。・・・との話だ。  (6)〈(婉曲)(連体形で)確信のある事柄について、えて断定せずに遠回しに言う。〉・・・であろうその~。・・・ているような~。
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__さす【さす】
『接続:{四段&ナ変&ラ変以外の未然形}』
〔助動サ下二型〕{させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ}
  (1)〈(使役)他の人物や物事に、何らかの動作を取らせたり事態の発生を促したりする意を表わす。〉・・・させる。  (2)〈(尊敬)(下に尊敬語「たまふ」・「おはします」・「まします」・「らる」を伴って)その動作を取る人物に対する尊敬の意を強める。〉・・・なさる。・・・あそばす。お・・・になる。・・・ていらっしゃる。  (3)〈(受身)(中世以降の軍記物で)実質的には受身の事態を、相手にやられたのではなく、相手がそうするのを許してやった、という言い方で表現する。〉・・・される。敵が自分を・・・するのを許す。  (4)〈(謙譲)(平安中期以降)(主に会話文中で)(「ご覧ぜさす」・「聞こえさす」の形で)相手に対する自らの行動を一段低いものとしてへりくだって言う。〉お目にかける。お耳に入れる。ご覧いただく。見ていただく。お聞かせする。申し上げる。
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__す【す】
『接続:{四段&ナ変&ラ変の未然形}』
〔助動サ下二型〕{せ・せ・す・する・すれ・せよ}
  (1)〈(使役)他の人物や物事に、何らかの動作を取らせたり事態の発生を促したりする意を表わす。〉・・・させる。  (2)〈(尊敬)(下に「ふ」などの尊敬語を伴って)その動作をする人物に対する敬意を強調する。〉お・・・になる。・・・あそばす。・・・なさる。・・・れる。  (3)〈(受身)(中世以降の軍記物で)実質的には受身の事態を、相手にやられたのではなく、相手がそうするのを許してやった、という言い方で表現する。〉・・・される。敵が自分を・・・するのを許す。  (4)〈(謙譲)(平安中期以降)(主に会話文中で)(「さす」・「らす」・「らす」の形で)相手に対する自らの行動を一段低いものとしてへりくだって言う。〉申し上げる。参上する。献上する。お話しする。上がる。差し上げる。
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__じ【じ】
『接続:{未然形}』
〔助動特殊型〕{○・○・じ・じ・(じ)・○}
  (1)〈(打消推量)(多く、自身以外の主語の動作について)実現しないだろうという判断を表わす。〉・・・ないだろう。 ・・・まい。・・・ということはないと思う。  (2)〈(打消意志)(多く、自身を主語として)その行動を取るつもりがない意を表わす。〉・・・ないつもりだ。・・・するものか。・・・まい。・・・したくない。・・・するのはいやだ。  (3)〈(打消勧誘)(自身以外の主語の動作について)その行動を取らぬよう希望する。また、その行動が不穏当だとする判断を表わす。〉・・・ないでほしい。・・・するのはよくない。・・・してほしくない。・・・されると困る。どうか・・・ないでください。・・・べきではない。
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__まし【まし】
『接続:{未然形}』
〔助動特殊型〕{ましか/(ませ)・○・まし・まし・ましか・○}
  (1)〈(仮想)(主に「・・・ましかば+~まし」のように、条件文+帰結文の構成で用いて)事実に反する、または、実現可能性の低い事柄について、仮想的に述べる。〉もし・・・なら~だろう。たとえ・・・でも~だろう。仮に・・・だとしたら~だろう。よしんば・・・だとしても~だろう。  (2)〈(願望)事実に反する、または、実現可能性の低い事柄について、その実現を希望する意を表わす。〉・・・ならいいのに。できれば・・・たいのに。ああ・・・だったらなあ。  (3)〈(躊躇)(疑問の意を表わす語を伴って)ある行動を取るべきかどうか、迷いや疑念がある意を表わす。〉・・・しようかどうしようか。・・・したものかどうか。・・・するべきなのか。  (4)〈(推量)(中世以降、助動詞「む」と同様に用いて)事実に反するわけでも実現可能性が低いわけでもない、普通の推量の意を表わす。〉・・・ろう。もし・・・ならば。・・・だろう。・・・よう。・・・であろう。
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