うんず【倦ず・鬱ず】〔自サ変〕

   [271] うんず【倦ず・鬱ず】〔自サ変〕

〈B〉 うんず【倦ず・鬱ず】
《「憂し」と同根語で、「同じ状況が延々と続くことに対する嫌気」を表わす「倦む」の連用形に「」が付いた「倦み為」の転か、とされる。「ん」が消失したり、代りに「む」が付いたりした「うず」・「うむず」の表記も見られる。現代語「うんざり」に通じる語。》
〔自サ変〕 {ぜ・じ・ず・ずる・ずれ・ぜよ}
  (1) 〈(期待通りでないために)気持ちがける。〉 気落ちする。がっかりする。失望する。落胆する。屈託を抱える。ふさぎ込む。   (2) 〈(同じ事の繰り返しに)対応を放棄したい気分になる。〉 飽き飽きする。嫌気がさす。うんざりする。げんなりする。きる。投げ出したい気分になる。
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【うず】でも【うんず】の中古カナ
-「ん」を巡る古語事情-
 日本語の表記記号として「ん」の仮名文字が登場するのは平安の世も終わりの頃である。
 しかしながら、紙面上に「ん」の字が登場する以前の時代にも、発音としての「ん」は古くから日本では行なわれてきたのである・・・ともなれば、そういう<「ん」読み>を、どう表記していたのか、という問題が当然浮かぶわけである・・・どうしていたか、わかりますか?答えは以下の2通りである:
1)表記上は「ん」の字は書かない(撥音無表記)が、書かれていなくても「ん」と読む。
・・・「うず(倦ず)」と書いて「う<ん>ず(倦<ん>ず)」と読むやり方であり、これが中古中期までの一般的作法なのであった。
2)「ん」の代替文字を宛てて「ん」と読ませる。
・・・最も自然なのは「む」であるが、その他にも「う」/「に」/「い」などの文字を「ん」代わりに用いていた。つまり、「う<む>ず」/「う<う>ず」/「う<に>ず」/「う<い>ず」がすべて「う<ん>ず」になるわけである・・・何ともややこしい話であって、これならいっそやらぬほうがまし(=「なかなか」なり)な話と言えそうだ。「撥音無表記」で「<ん>の音は適宜補って読むべし」が妥当な作法だったことがわかるであろう。
-「うず」を取り巻く現代語あれこれ-
 「うず(倦ず)」は元々「うむ(倦む)」から生まれた語で、連用形「うみ(倦み)」が名詞化したところに形式動詞「す(為)」が付いて「倦み+す」(現代語風に言えば「退屈してる」)となったもの。そのように最初から「M」音を含む語だけに、「ん」文字不在の時代には「うず」と並んで「うむず」の表記が「うんず」の代用品となるのが自然な語だったようである。
 その「うんず」は、現代語の「うんざり」にストレートにつながる語であるが、これ以外に「うず/うんず」につながる現代語はないであろうか?
 「うずうず」などはどうであろう?撥音無表記古語なら「うず」となるだけに、その畳語(二枚重ね)表現としては自然に結び付きそうであるが・・・これは意味の上で無理がありそうだ。「うず/うんず」は「同じことの繰り返しで、うんざり・げんなり・がっかり」なのに、「・・・したくて<うずうず>している」は積極的行動を求める表現だから、方向性はまるで逆。種明かしすれば、「うずうず」はまた「むずむず」であって、「むず」は「・・・む+と+す」であり「・・・為むと欲す/・・・せんとほっす」であるから、「・・・したくてしたくて仕方がない」の意味となる「うずうず」の語源は「むず・むず」であって「うず・うんず」ではない、ということになる。
 一方、「またそれかよ・・・いい加減やめてくれないかなぁ・・・付き合わされるこっちの身にもなってくれよ、まったく・・・ブツブツ」という倦怠感の表現として、その音感的カッタるさがウケて20世紀の終わり頃から(特に若者言葉として)多用されるようになった言葉がある ― 「ウザい」だ。「うざったい」の形で細々と使われていた「うず・うんず」の末裔が、略語化(「うざい」・「ウザっ」)によって生み出される唐突な滑稽味という新たなる風味を加えて息を吹き返した感じの語である。
 ちなみに、古語には「うざいがき」なるへんてこ語もある。「有財餓鬼」と書き、「残飯や汚ない物を食らう地獄の餓鬼」という仏教語であって、生前に強欲な守銭奴だった連中が、あの世でその報いを受けて「うざいがき」になるのだそうだ・・・から、懸案の「うざい」とは関係ない表現である・・・が、「ウザいガキ!」と書けば何となく「ったく、カッタるいガキだぜ、消えな!地獄でもおうちでもどこでもいいからとっととオレの前から失せやがれ!去ね、シッ、シッ!」みたいな響きがあって、面白い。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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