おほす【仰す】〔他サ下二〕

   [332] おほす【仰す】〔他サ下二〕

〈A〉 おほす【仰す】
《「負ふ」の他動詞「負ほす」(現代語で言う「負わす」)に発し、「他者に何事かを役割として背負わせる」の原義から転じて「目上の者が目下の者に命じる/言葉をかける」の意となった。単独で用いるのは中世以降で、中古までの用法では必ず「らる」・「給ふ」を伴う。》
〔他サ下二〕 {せ・せ・す・する・すれ・せよ}
  (1) 〈(鎌倉時代以前の用法)「言ふ」の尊敬語。(直後に必ず尊敬の助動詞「らる」・補助動詞「ふ」を伴った「おほせらる」・「おほせたまふ」の形でのみ用いる)〉 おっしゃる。言われる。せになる。発言なさる。   (2) 〈(鎌倉時代以降の用法)「言ふ」の尊敬語。(尊敬の助動詞を伴わずに単独で用いる)〉 おっしゃる。言われる。せになる。発言なさる。   (3) 〈(目上の者が目下の者に)何事かを為すように命令する。〉 命じる。言明する。言いつける。
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【仰す】の敬語化は鎌倉以降
 古語の時代背景まで一々覚えねばならぬのか、と思うと受験生としては気分が重いであろうが、いかにも尊敬語っぽい「仰す」なる古語が、それ1語で尊敬語として用いられるようになったのは鎌倉時代以降であって、それ以前(中古まで)は「仰せ+らる」/「仰せ+給ふ」という「尊敬の助動詞・補助動詞」との組み合わせで初めて「おっしゃる」の意味になったという事実は(落第を望まぬなら)覚えておく必要がある。
 この語は元来「負ふ」の他動詞「負ほす」の転じたものだから、現代語風に言えば「負わす=負担として背負わせる」であり、目上から目下に向けて「命じる」という強圧的響きを持っていた。それが「らる/たまふ」を加えた「仰せらる/仰せ給ふ」となることで「お命じになる」から「おっしゃる」の意へと転じ、やがて「らる/たまふ」抜きの「仰す」だけでも「おっしゃる」の尊敬語として通じるようになったわけである。

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コメント (1件)

  1. the teacher
    ・・・当講座に「man-to-man指導」はありませんが、「コメント欄」を通しての質疑応答ができます(サンプル版ではコメントは無効です)

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